国内起債市場を斬る 起債評価:4/1~4/5

2019年度の起債シーズンは、10年長期国債入札とともにはじまった。しかも、週初めに新しい元号の発表があり、いよいよ新時代への胎動もはじまっている。年度の初めに動き出すのは、公共セクターと電力、ノンバンクというのが、定番である。この週も、東北電力、電源開発、関西電力、中国電力と電力が続き、日本政策投資銀行と住宅金融支援機構の財投機関債が募集している。

この二つの財投機関債は、年度の初めから複数本立ての大型起債となった。日本政策投資銀行は、3年債200億円、5年債250億円、10年債350億円、20年債100億円、40年債350億円と5年限で計1,250億円の募集である。それに比べると、住宅金融支援機構の5年債350億円、10年債100億円、20年債250億円と3年限で計700億円は小さく見えてしまう。しかし、金利低下の影響を強く受けたことで、10年債のクーポンはいずれも0.135%でしかない。40年債ですら0.81%クーポンと1%に満たないのであるから、投資家の購入意欲も高まり難い。

ノンバンクでは、トヨタファイナンスが3年債300億円と5年債600億円の計900億円、三菱UFJリースが5年債200億円と10年債100億円の計300億円、クレディセゾンが20年債120億円、オリエントコーポレーションが5年債50億円と7年債150億円の計200億円、三井住友ファイナンス&リースが5年債200億円と10年債100億円の計300億円が募集されている。ノンバンク全体では、総計1,820億円の募集である。ノンバンクの事業特性を考えると、クレディセゾンの20年債はやや年限が長過ぎるだろう。特に、個社事情としては、みずほフィナンシャルグループとの包括的業務提携関係を解消することで合意しており、今後UCカードの分離が予定されている。クーポンは1%と高水準であるが、A+(R&I)という格付けだけで投資評価を行うべきではないだろう。

多く見られたノンバンクの起債のうち、トヨタファイナンスの5年債とオリエントコーポレーションの5年債は、いずれもグリーンボンドの認定を得ている。奇しくも両案件とも今年の1月に起債環境の変化から募集を一旦見送っていたもので、その後の株価の回復や金利水準の低下を受けて、年度初めの再チャレンジとなっている。ノンバンクの発行するグリーンボンドというのは、「金に色はない」という前提に立ち返り、日本の社債は基本的に発行体の全財産に対する請求権であることを考えると、何度も述べるように単なる名分にしか過ぎないのであり、投資家は決して割高に買ってはならないのである。

国内起債市場を斬る 新元号特別号:2019年度の起債市場を展望する

この4月からはじまる年度は、途中で元号が「令和」に変わるために、平成31年度と称するのは適切でないだろう。4月1日に新元号が公表されても、実際の適用は天皇陛下が退位されてからであるから、最初の1ヶ月は平成31年度である。これで元号よりも西暦の使用が一般化するとも思えない。先進国で元号を使用している国は他にないが、それ以外の国であれば、イスラム暦を使用していることもある。キリスト教由来の西暦を必ずしも唯一の世界標準とすべきではないという説もある。元号も切換等面倒であるのだが、時代の区分という意味でも存在意義はあると思える。かつて吉祥が現れたり、天変地異が起きたりしたことを改元の理由としたのも、無理はない。一世一元を制度化したのも、日本は明治以降だし、中国でも明清の時代である。

2019年度の起債市場を占うには、まず、前提としての金融環境を考える必要がある。ベースとしては、日銀の金融政策を展望することになる。昨年後半に見られた金利の先高感は、米中の貿易摩擦拡大とそれに伴う両国経済のみならず世界経済全般の失速感から、既になくなっている。欧米の景気は、今年度後半は横這いか下向きの可能性すら懸念される。こういう周辺環境で日本経済のみが強いことは考え難い。消費税率が10月に予定通り引上げられたとしても、そのことだけで金利が上昇するとは思えないのである。結局のところ、2019年度に大きな経済成長は期待できないし、日銀の金融政策に大きな変更がないと考えるならば、金利の大幅な上昇はないという見通しになる。欧米が金融緩和の見直しを停止して万一緩和に逆戻りした場合にも、日本が緩和を強化こそすれ、引締めに転じられる可能性は低い。金利は概ね横這いと見込むとして、信用スプレッドは欧米の景気後退が顕著になれば、拡大する展開も考えられるが、投資家が購入意欲を強めると、縮小することもあろう。したがって、発行体の調達意欲が高まらない限り、淡々とした社債募集が続くのではなかろうか。

発行体の調達意欲を左右する要素として、金利の先高感がないとすれば、それ以外の要因に注目すべきである。一つには、企業が資金調達を大規模に行うのは、M&A絡みである。既に新年度早々にも、武田薬品の大規模な起債が予定されており、今後もこういった感じで起債が行われることになろう。したがって、必ずしも季節性はない。年度の初めや四半期の頭に、公的セクターや電力等の募集は集中することになるが、M&A絡みの大型起債は別であろう。

投資家側の行動を考えると、期間収益を確保する観点からは、なるべく早めに投資したいだろう。金利の上昇による評価損の拡大が起こり難いと考えるならば、年度初めこそが投資の好機である。発行体側とは相容れない着目点であるから、年度初めの方が投資家の需要は集まり易いために、スプレッドはタイトになる可能性がある。結局のところ、募集のタイミングに関しては、発行体による決算の発表や株主総会等の要素に左右されることになり、それらのスケジュールについては、例年と大きく異なることはない。なお、今年のゴールデンウィークは10連休が予定されているが、従来から決算発表の時期であるために。社債の募集は必ずしも多くない。今年は、ゴールデンウィーク近辺だと債券募集と払込の間が不必要に空く可能性もあり、4月22日の週は債券募集があまり見られないのであろう。

国内起債市場を斬る 年度末特別号:起債年限を考える

最近の起債年限を見ると、一つの傾向として言えるのが、長期化である。特に、劣後債やハイブリッド証券について最終償還までを考えると、永久債であったり、数十年先の償還が設定されている。しかし、銀行・証券・保険といった金融関連の場合には、期限前償還の蓋然性(がいぜんせい)が極めて高い。クーポンのステップアップ要因に加えて、期限前償還しないことについて、監督官庁に対する説明が求められるからである。状況によっては、業務改善計画の提出が必要になるかもしれないのである。一方、事業会社の場合には、経営環境の変化等から再調達コストがどうなっているか次第で、期限前償還を見送られる蓋然性がないとは言えない。クーポンのステップアップ幅が不十分であれば、尚更であろう。万一期限前償還されなかった場合の信用評価を、業種全体の将来像を考慮して考える必要がある。しかし、言うまでもなく、それは極めて困難である。

年限の長期化は、低金利のメリットを長期間享受する発行体の調達ニーズに対して、低金利環境下でデュレーションの長期化で利回り確保を目指す投資家の購入ニーズ双方に対応する。一方で、信用プレミアムを取ることでリターンを上げる手法も投資家は選択できるが、ベースの利回りが低くなっているだけでなくマイナスになっている可能性もあり、投資妙味は極めて低い。特に、信用力に懸念のある発行体に対して、長い年限を与信するのは難しい。結果として、信用力と年限のバランスを考慮して投資対象を検討することが求められるのである。超長期の与信に適する発行体は、自ら業種や企業が限られるだろう。

近年の起債市場では、中途半端な5年前後の中期年限の起債が減少する一方で、従来あまり見られていなかった2年債や3年債といった短期債が目立ち続けている。2年債は、特に、財投機関債や高速道路会社債といった公共セクターでの募集が見られる。一方、3年債の募集のうち、かなりの物が、日銀による社債買入れオペを意識した起債であると考えられる。購入者は、セカンダリーになった瞬間から、日銀オペを意識する。つまり、本格的な保有目的の投資ではなく、ディーリングタッチの短期購入でしかない。これも日銀の金融緩和による市場の副作用の一つと考えられるのだが、既にETFやJ-REITの買入れとともに、社債の購入は目的と現実との乖離が大きくなっているように感じられる。

足元では、10年国債利回りの水準が大きく低下している。こうなると、10年債の国債対比スプレッドが形式的に大きくなる可能性があり、起債市場の受ける影響は小さくない。特に、4月は多くの企業や投資家にとって年度始めであり、投資家も期間収益を考えると、早めの買入れが望ましいと考える。しかし、為替市場や株価の変動に振らされている現状を考えると、新年度の起債市場への投資家の対応は、慎重にならざるを得ないかもしれない。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/11~3/15

2018年度の起債募集シーズンは、ほぼ終わった。翌週に募集案件があるという観測も目にしているが、大勢は15日までに終わったと考えられる。しかも、11日の週に募集されたのは、公共セクターと保険持株会社の劣後債、個人投資家向け社債に、日本航空債といった顔触れであった。

公共セクターのうち、地方公共団体金融機構は定例の10年債及び20年債の募集であり、国債対比のスプレッドはほとんど変動がない。地方公共団体の減債基金や地方公民関連の共済組合等の安定した消化先があるだけでなく、構造的に全地方公共団体の共同ファイナンスという特性もあるために、信用力の評価も高い。同年限の国債よりも、スプレッドが上乗せされていることで投資価値は低くない。また、日本高速道路保有・債務返済機構は、非定例で20年債を募集した。募集金額が84億円と中途半端な金額である。

第一生命ホールディングスの劣後債は、SPCを用いず国内市場で直接発行という形では、T&Dホールディングスやかんぽ生命に続いての募集となる。永久劣後債であるが、10年目にコール可能な形式であり、実質的に10年債という理解の投資家も多かったことだろう。非金融会社の劣後債と異なり、期限前償還を選択するためには、金融庁の了解を得る必要があるので、よほどの環境変化や監督姿勢が変わらない限り、10年経過時点での償還は確実であると想定すべきなのだろう。10年債で1.22%クーポンと考えれば、十分に高い利回りである。少子高齢化の進む日本社会において生保ビジネスに翳りがあるのは否定できないが、海外展開等積極的に進めている第一生命グループに関しては、A-(JCR)格という評価なら決して低過ぎるということもないだろう。

個人投資家向け社債を募集したのは、イオンモールである。13日から募集しているが、5年向けの0.3%クーポンである。地方や国外では圧倒的なマーケティングパワーを有するイオンであるが、国内生保以上に少子高齢化の影響を受けていくのではないか。ショッピングモール発祥とも言えるアメリカでは、既にモールの衰退が顕著になっており、イオンモールのビジネスモデルにも、明らかに限界が来ている。個人投資家向けではやや長めの5年という年限であるが、ギリギリの年限設定と見て良いだろう。0.3%クーポンは低水準と言えるが、国債や銀行預金の利回りに比べると十分に高いのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/4~3/8

年度末まで1ヶ月を切り、社債の募集に適した期間も終わりに近づいているが、起債市場には大きな盛り上がりは見えない。以前から指摘しているように、金利の先高感がない中では、特に必要がなければ、このタイミングでの募集を選択する意義は乏しい。ベースとしての金余りが続いており、企業側の資金調達にとってはこの週に起債するインセンティブは乏しいのである。昨年の夏から秋の金利上昇も、米国の金利引締めに向けた動きや欧州での金融緩和解除の動きから、日本だけが低金利を維持できないという背景があり、他律的な金利上昇であった。足元では、米国の利上げが停止されるという観測が高まり、欧州の金融緩和解除も先送りになるという観測が高まっており、日本の金利環境に変化が訪れるとは、ほとんどの市場参加者は予測していない。従って、この3月に慌てて起債する必要などないという筋書きは変わっていない。

この週の起債は、中日本及び東日本高速道路、製紙メーカー持株会社の北越コーポレーション、地銀持株会社のコンコルディアホールディングス劣後債、スポーツ用品メーカーのアシックス、九州電力、化学品及び食品のメーカーであるADEKA、東海及び東日本旅客鉄道、三井不動産、東京建物の劣後債といった顔触れである。本数と言う意味では、引続き、5年債が多いのだが、北越コーポレーションは0.22%クーポン、アシックスは0.2%クーポン、九州電力は0.24%クーポン、ADEKAは0.18%クーポン、三井不動産は0.16%クーポンと、0.2%前後の利回りのものが多い。唯一、東日本高速道路は、信用力の高さから0.07%クーポンと突出した低利回りである。その他に、中日本高速道路は0.001%クーポンでオーバーパーの2年債、JR東海も0.02%クーポンの2年債を募集している。

これらの対極に位置するのが、超長期債であろうか。JR東日本は0.782%クーポンの30年債と0.997%クーポンの40年債を募集した。その他に、九州電力も0.788%クーポンの20年債を募集している。電力・ガスと鉄道は超長期債の常連であり、業種特性からも相応しいものと考えられている。一方で、東京建物の劣後債に関しては、コールされずに超長期債の最終償還まで保有を迫られた場合の信用リスクは大きい。不動産業に対する37年債や40年債の与信は、かつてのバブル経済の崩壊等から30年も経過していない歴史を考えると、最初のタイミングでのコールを前提とせざるを得ない。それでも、最初の償還までは7年もしくは10年であり、不動産業に対する与信という意味では、期間が長い。同日に募集された三井不動産のシニア債だと、7年債のクーポンは0.28%で、10年債のクーポンは0.38%である。同社がJCRから取得した格付けは、AA格である。劣後性を考慮した東京建物のハイブリッド債の格付けは、JCRのBBB格と6ノッチも下である。37年債の当初7年のクーポンは1.66%で、40年債の当初10年のクーポンは2.15%である。利回りとしては明らかに高いのであるが、BBB格の不動産業者に対する長過ぎる与信ではなかろうか。40年債はグリーンボンドの認定も受けているが、それが投資家の主な購入理由になると言うのも、不自然な判断であることは隠せない。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/25~3/1

いよいよ年度末も近い。金曜日が3月1日なので、週央よりも、月が変わってからの方が動きは多い。ボーナスシーズンでもないのにクレディセゾンやオリックスといったノンバンクによる個人投資家向け起債の条件決定がなされた事に違和感を覚える。しかし、低金利が続く中で個人投資家の社債購入意欲は小さくないはず、ということで発行体も証券会社も狙ったのであろう。もっとも、クレディセゾンは、みずほフィナンシャルグループと距離を置く趣旨の報道が見られており、個人投資家向けでも10年債というのは、同社の今後のビジネス展開を考えると、慎重に取組むべきだろう。

それ以外の機関投資家向けの起債は、多彩であった。しかも、必ずしもフリークエントイシュアーではない発行体が多く、レア物起債が目立つ展開となった。住友林業は、事業ウェイトとしては住宅関連が大きいとは言え、林業を冠するメーカーである。5年債と10年債を募集し、今回は第7回債と第8回債である。オリンパスの5年債は第23回債と回号は小さくないが、2011年には粉飾決算で上場廃止の危機に瀕し、2017年には起債市場に復帰したものの、昨年11月の起債準備時にも内部告発を受けた株価急落から募集を見送った発行体である。投資家の発行体に対する不信は小さくない。

自動車部品メーカーのフタバ産業は、5年債と10年債を募集しており、第2回債と第3回債である。また、JR九州が10年債と30年債を募集しているが、第1回債と第2回債であり、初の公募社債募集である。同様に、大塚ホールディングスは、5年債・7年債・10年債の3本立てを募集しており、これらが第1回債~第3回債である。そういう意味では、デビュー銘柄の多い起債市場であったと言えよう。

また、この2月1日にドンキホーテホールディングスからパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに社名変更したため、同社の3年債・7年債・10年債の3本立ての起債は第15回債~第17回債と回号は多いものの、レア感が強い。社名変更については、2月4日の弊稿でも触れたが、環太平洋を征するという経営戦略は感じるものの、競泳の国際大会を連想させる「パンパシ」で、投資家へのブランド戦略は成功するのであろうか。

その他にも、豊田通商や、あおぞら銀行、京成電鉄といった起債頻度の多い銘柄も社債を募集している。年度内の募集に適した期間も、概ねあと2週間程度である。既に、鉄道や不動産といった銘柄の起債観測が上がっており、ハイブリッド債の募集予定も公表されている。この金利先高感が皆無の環境下で、やや盛り上がりに欠ける展開になるかもしれないが、2018年度の起債市場は、いよいよラストスパートである。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/18~2/22

漸く年度末に向けての起債が活発になりはじめて来た。とは言っても、昨年の夏から秋に診られたような金利の上昇懸念は沈静化しており、10年以内の年限の国債利回りがマイナスに沈み込んでいる状況においては、国債対比のスプレッドは必然的に大きくなってしまうために、発行体側の調達意欲も高まらない。低金利であることを活用するのなら、長めの年限で調達することも考えられるが、日本銀行の強力なイールドカーブコントロールが微動だにしそうもないために、慌てる必要はないと考えているのではないか。投資家側も特に無理して社債等を購入するつもりはないようであり、何となく落ち着いた均衡が成立しているようである。

この週に募集された債券の中では、日本ハムが5年債・7年債・10年債の3本立て各100億円を募集している。格付けはA(R&I)及びA+(JCR)という水準であり、フリークエントイシュアーではない。今回が第10回債から第12回債の募集である。食品メーカーの社債に関しては、一般的に製品に関するヘッドラインリスクが顕在化しない限り、強い投資家のニーズがある。好不況に大きく左右されない消費者のニーズに支えられるという業態の特性であるが、産地や賞味期限等の表示偽装などスキャンダルが生じた場合には、消費者の健康や生死に影響を与えかねないために、一気に収益力が悪化し信用が失われる可能性がある。10年債の国債対比スプレッドは+38bpsで、同日に募集された中国電力の10年債よりも4bpsほどタイトである。中国電力の格付けはA+(R&I)及びAA(JCR)とより高水準であり、電力債に対するプレミアムを考慮しても、やや日本ハムの10年債に割高感がある。

相変わらずノンバンクの起債が多く三菱UFJリースの3年債、リコーリースの3年債、日立キャピタルの5年債といずれも100億円ずつの募集が行われている。なお、日立キャピタルの5年債は、R&Iよりグリーンボンドアセスメントを得ている。認定の理由としては、“調達資金の使途となる対象事業は、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーによる発電事業である。尚、今回発行されるグリーンボンドの調達資金は、現在子会社において開発されている太陽光発電事業の設備購入等のための子会社向け貸付金の一部(新規貸付金(約4割)及びリファイナンス(約6割))に充当される予定である”とされている。しかし、お金に色がない以上、この程度の理由で“グリーンボンド原則2018及び環境省のグリーンボンドガイド ライン2017年版に則ったものである”と認定されるのはいかがなものか。しかも、アセスメント機関が信用格付けの付与会社であるというのも、構造的に妙である。弊誌欄で度々警告させていただいているが、グリーンボンド評価の適正な運用を求めないと、いずれすべての起債が、グリーンボンドと認定されてしまいかねないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/5~2/15

2月に入っても、起債市場は引続き閑散期にある。この2週も、月初めから続く公共債が起債のほとんどを占めている。前半の週末である8日に盛り上がりを見せたとは言え、ほぼ公共債が主体である。分類学上、新関西国際空港や西日本及び阪神の高速道路は、社債と言えなくもないのだが、新関西国際空港の起債は財政投融資計画に基づくものであって、財投機関債とされるべきものである。西日本及び阪神の高速道路会社による社債は、確かに社債ではあるものの、日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的債務引受条項が付されており、最終的には財投機関債発行団体の債務に帰すため、実質的な財投機関債と同等の枠組みにあるものと考えられる。したがって、広い意味での公共債カテゴリーに属するものと考えて良いだろう。

唯一例外の位置付けにあるのが、キューピーの社債であった。食品メーカーに位置付けられる同社は、11月期決算を採用しているため、12月期や3月期決算企業とは異なるタイミングでの社債募集が可能になったものである。こうした決算期の異なる企業は、もっと他社と異なる時期での社債募集を考えると良いのだが、右に倣えの体質が強い企業の場合には、なかなか踏み切られないことが多いようである。

建国記念の日からはじまった週に入っても、状況には大きな変化が見られない。相変わらず、首都高速道路の社債は、実質的な財投機関債とみなされる。その他に債券を募集したのが、地方公共団体金融機構である。月例の10年債200億円を募集した後に、15日の金曜日に40年債をフレックス枠の中で募集している。10年債は、国債利回りのマイナス水準への低下もあって、クーポン0.166%で国債対比スプレッド+17bpsと見るも無残な状況である。一方、40年債は同機構にとって初めての募集となる。厳密には、FLIPに基づく債券として、40年債の募集履歴はあるのだが、引受シ団を組んでの起債としては初めてであり、40年第1回債の回号を得ている。国債対比+20bpsと10年債を上回るスプレッド水準を付されたものの、クーポンは0.882%と1%にも満たない。当座の利回り確保目的の投資対象としては、信用力と流動性の観点から問題ないが、将来の金利水準の変動に対しては、懸念を抱かざるを得ない。

いつまで低金利が続くかというのは日本国内のすべての債券投資家が持つ疑問であり、日銀による強力な金融緩和が暫く続くことが確実視されるものの、40年という長いタイムスパンにおいては、環境の変化が確実視される。「何時まで続くか低金利、何時までも続かぬ低金利」と観るのが一般論だ。低金利が更に30年、40年と続いているならば、日本経済は緩やかな停滞を続けているだろうし、そもそも停滞経済において金利水準は安定を欠くことになると思われるために、持続可能性が疑われるのである。消去法で残った選択肢なのかもしれないが、40年は持ち続けられるとは誰も思っていないのだろう。

国内起債市場を斬る 旧正月特別号:2019年の投資環境を考える

投資家の多くは、2018年度決算の着地を睨みつつ、来年度の投資計画を検討していることだろう。特に、株価や米国金利が大きく変動している中では、如何にリターンを獲得するかは、例年以上に頭を悩ませることになるだろう。米国の利上げが停止されるという観測からは、米金利の上昇が緩やかになるという想像ができる。となれば、為替の要因を無視すれば、米債への投資が妙味を持つ可能性はある。一方、株価が変動し、特に、過去数年のような上昇トレンドにならないと考えるなら、為替は横ばいから、やや円高になる可能性を念頭に入れておくべきだろう。為替変動によって、円投からの米債の投資妙味は相殺されてしまうかもしれない。

外債と株式が投資対象の中で相対的に後ずさりするならば、国内債券への投資が必然的に消去法で残ってくる。日銀は、依然強力なイールドカーブ付量的質的金融緩和を、物価安定の目標を実現できるまで継続すると明示しており、執行部の退任や政権によるサポートの喪失といった事態が起きない限り、国内の低金利は続くだろう。昨年の夏にあった金利上昇懸念は、あくまでも米国の金利上昇と、それによる円安懸念を背景としたものであり、日本国内の要因からの金利上昇は見通しが立たない。仮に金利が上昇する事象が生じたとしても、イールドカーブコントロールで吸収されてしまうだろう。

米中の経済戦争だけが中国の景気後退の要因ではないだろう。そして統計操作が中国だけの問題でないこともわかった。なかなか投資対象の選択に自信は持てない環境が続くだろう。企業業績が低迷するなら、金利が低い環境において、信用リスクやデュレーションリスクを取ることで平均利回りを引上げるという手段にも、自制が必要である。かといって、不動産やインフラ投資といったオルタナティブ資産に向かうのも、高値掴みになる可能性が極めて高い。かなり八方塞がりの投資環境が、2019年度には待っていると考えられるのである。

簡単なソリューションは存在しないだろう。慎重に環境や投資対象を分析しつつ、分散効果を意識することが唯一の答えなのかもしれない。とは言え、過去を振り返ると、世界金融危機のような大きなショックが生じた場合には、国内債券以外に対する投資は軒並みマイナスのリターンとなった。そうなると、国内債券の利回りがプラスになったと言っても、他の資産の大きなマイナスをカバーするには不十分なものにしかなり得ない。投資家にとっては、辛抱の求められる新元号の初年度になるのではなかろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/28~2/1

起債市場は閑散期に入った。この週も、月末を挟む週というタイミングであり、国内公募社債等で募集されたのは、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債と、社債が1社2回号のみであった。地方公共団体金融機構の起債は、定例年限の起債以外に、フレックス枠があり、更に、FLIPに基づく起債がある。フレックス枠が比較的まとまった金額の起債を、主幹事方式で行うのに対し、FLIPは予め指定されている証券会社が30億円以上の販売目処を持って、発行体と折衝して引受けるものである。定例の募集年限と重ならない年限で発行されることが多く、9年債など普通の公募普通社債等では見られない年限も少なくない。主に四半期の最初の月に募集されることが多く、そういう意味では1月の月例債が募集された後のタイミングで、23日に第453回9年債200億円と29日に第454回35年債50億円を募集している。FLIPの起債で200億円というのは、年間でもあまり多くない。なお、来年度はフレックス枠もFLIPも増額される方針である。

メーカーで公募社債を募集したのは、機械メーカーのTHKである。今回募集したのは、5年債と7年債各100億円である。海外で事業展開を行う連結子会社と決算期を合わせるために、2017年より3月期決算から12月期決算へと変更している。それが結果的に、このタイミングでの起債を可能にしたとも言える。同社が2月14日に公表するのは、12月期決算に移行して初めての年間決算である。今回の起債が第13回債と第14回債であるから、決してフリークエントイシュアーではない。今回がほぼ1年ぶりの社債募集である。格付けは、R&IとJCRの2社からA+格を取得している。

THKは1971年に目黒の不動前の近くで、寺町博氏が東邦精工株式会社を設立創業。工作機械部品、リンクボール、LMローラー、LMボールの販売を開始した、歴史の新しい会社で、1984年に現在のTHKという社名に変更している。比較的社名の変更タイミングは古いが、最近のアルファベット3文字の社名変更は、和製英語との狭間でいささか違和感を感じる。THKの場合も、旧社名の英文名称を略した形のようだが、最近のTVCMで盛んに流しているように、旭硝子は同様にAGCへ社名変更をしている。名は体を表すと言うように、社名が何を行う企業かがわかる方が望ましいのか、本業以外の新分野を開拓しようとするIR戦略の一環なのか、経営者の真意は様々のようだ。もっとも買収や統合の結果で、何の会社かわからなくなっているJXTGホールディングスという社名も、Wリーグ(女子バスケット)のチーム名によって「ENEOSの会社なんだ」と世の中に浸透している気がする。NY取引所のティッカーを決めるわけではないので、社名変更の場合はもっと強い「ブランド力」を意識した新会社名にしていくべきだろう。