国内起債市場を斬る 起債評価:11/19~11/22

週央から起債が数本ずつ見られたが、結局、勤労感謝の日前の22日に案件募集が集中している。時系列で見ると、火曜日は2社2本で、水曜日は2社1機構の計5本と増え、木曜日は14社計23本と一挙に跳ね上がった。幾ら条件決定前に、スプレッドやクーポンの絶対水準で購入者と握ってあるとしても、最終的な手続きが必要であり、案件の集中は売り手の証券会社にとっても、買い手の投資家にとっても、好ましいことではないという事情は、言うまでもない。

現在の日本の起債市場において、条件決定を行い、事務主幹事を務めるトップレフトの証券会社は、ほぼ5社に限定される。かつての起債会のような統制組織ではなく、自然発生的に旧大手四大証券と銀行系証券の大手が取り仕切る市場になっているのである。SMBC日興証券は、旧四大証券の一角であるが、銀行資本の傘下にあり、当該銀行の親密な準大手証券を吸収しており、みずほ証券や三菱UFJ証券といった銀行系の直系証券を中心に親密な準大手証券等を統合したものと、類似の形態である。この22日のトップレフトの分散を見ると、野村6本、大和3本、SMBC日興7本、三菱UFJ5本、みずほ2本という状況である。その他の準大手証券は、主幹事団の一角を占めることはあっても、全般を取り仕切ることは稀である。

これら現在の五大証券は、事務的な管理能力、投資家向けの販売ネットワーク、更には、発行体とのリレーションといった各面で、圧倒的な力を持っている。しかし、案件が集中した際に、どこまでキメ細やかな対応ができるだろうか。また、情報ベンダーの起債情報担当者も、案件の集中に悩まされている。あまりに募集が一日に集中するので、十分な分析記事も書けないし、取材も疎かになりかねない。市場参加者の様々な声を集めて報道する情報ベンダーが情報収集に苦戦するようでは、健全な市場の発展を阻害されかねない。結局のところ、起債の条件決定が集中すると、誰にとっても良いことはないのである。よほど条件決定に自信の持てない発行体や主幹事証券が、人の目を憚り(はばかり)、こっそり募集しようとしていると勘繰られても仕方ないではないか。

休日を含まない5営業日ある週で、休み明けの月曜日に募集が難しいのは仕方ないだろう。しかし、火曜日や木曜に国債の入札があることは、必ずしも社債等の条件決定や募集に影響しない。起債市場で安定した運営が行われるためには、月曜日を除く残りの4営業日である程度分散して条件決定が行われるべきであろう。近年の各週最終営業日に募集が集中することは、この国内資本市場にとって決して良くない慣習なのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:11/12~11/16

ようやくこの週の後半になって、起債市場が大きく動きはじめている。電力債から募集がはじまった(厳密には、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債が先行している)のは、従来からの典型的なパターンと言って良いだろう。この週に動いたのは、他に道路関係の公的セクターは当然としても、いきなりメーカーの持株会社であるJFEホールディングスと通信業であるKDDIが社債を募集したのは、珍しい展開かもしれない。どちらも決してフリークエントイシュアーではないのである。

JFEホールディングスが募集したのは5年債100億円であり、決して過大な規模でもないし、基本的には安定した年限である。同日に募集された東日本高速道路の5年債0.07%クーポンやKDDIの5年債0.11%クーポンと比較すると、0.15%クーポンはやや高い水準である。しかし、R&Iの格付けを見ると、東日本高速道路がAA+格で、KDDIがAA-格、JFEホールディグスがA格と大きく異なる。必ずしも割安には見えない投資家も多かったことだろう。

KDDIは5年債400億円、7年債300億円、10年債200億円の計900億円とまとまった社債を募集している。かつてのような国際電信電話会社ではなく、携帯電話も含めた通信事業者である。今後5Gのネットワーク展開が必要であり、MVNOとの競合等決して安定した事業基盤にないのではないか。その時に、果たして7年債や10年債といった年限は適切だろうか。ソフトバンクグループのように、M&Aや巨額の投資で本業の収支が脅かされるといった懸念は少ないものの、NTTを含めた3社の競合関係は今後とも続くだろうし、事業展開の華やかさを相対的に欠くKDDIの将来像をきちんと理解しておかないと、今回の社債に投資するのは難しいはずである。

それでも、今週で売れ残ったのが、九州電力の10年債だろう。同時に募集された20年債は0.883%クーポンと高水準で100億円の募集であったために消化できたものの、10年債200億円は市場で持て余されたようである。そもそも今回設定された国債対比+34bpsというスプレッドの水準が、この夏以降の電力債の売行き難航を無視したものであった。横並び意識の強い業態において、過去の起債と同程度か、わずかにスプレッドを拡大した程度では、消化に苦戦し募残が生じた前例を踏襲するに過ぎない。結果的に、10年の電力債は消化の悪循環に陥ってしまっているのである。特に、収支構造の悪い電力会社が、このトラップから逃れるためには、よほどの経営判断が必要だろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:11/5~11/9

引続き、3月期決算企業の決算発表があるため、民間企業の起債は停滞している。それでも、月初めの10年長期国債の入札を受けて、地方債や財投機関債等の募集は淡々と進んでいる。11月頭の起債が閑散となるのは、例年並みの季節性でしかない。しかし、冷静に12月末までのカレンダーを考えると、今月中旬以降で社債等の募集可能な営業日は、年内発行には残り1ヶ月ほどしかない。そろそろ起債観測も、大型案件やメーカー等動きの遅い発行体の名前がチラホラと見えて来ているようだ。

 

必然的に、この週の起債の中心は公的セクターとなる。募集された顔触れを見ると、住宅金融支援機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、都市再生機構といった財投機関に加ええ、地方公共団体金融機構となる。いずれもR&Iの格付けがAA+格乃至AA格と高水準であり、政府からのサポートが実質的に期待できる発行体である。したがって、募集された年限も、超長期にまで及ぶものが珍しくない。

 

募集日が火曜日と金曜日とに分散しているが、日本銀行によるイールドカーブコントロールで金利水準が大きく変動していないから、クーポン水準別にこの週の公的セクターの起債を並べてみよう。5年債は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が0.03%で、住宅金融支援機構が0.02%となるR&Iによる1ノッチの格付け差が影響しているというほどの物でもない。地方公共団体金融機構に関しては、地方公共団体や関連共済組合等投資家が多いのである。なお、今月の鉄道建設・運輸施設整備支援機構はグリーンボンドではないが、ノンリコースでなく一般財源が返済原資となる場合には、特定回号のみグリーンボンド認定を受けることが適切なのだろうか。単に、発行体と購入者の自己満足に過ぎないのではないか。

 

10年債は、住宅金融支援機構と鉄道建設・運輸施設整備支援機構の0.289%、地方公共団体金融機構の0.279%である。前者が国債対比+16bpsとされ、後者が同対比+15bpsとされているから、ベースとなる国債利回りは火曜日と金曜日とでほぼ同水準にあったということである。5年債と同様に、地方公共団体金融機構の債券に対するニーズは強い。

 

超長期ゾーンの募集は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の15年債0.515%クーポン、住宅金融支援機構の30年債1.026%クーポンに加えて、都市再生機構が20年債0.716%クーポン及び40年債1.246%クーポンを募集している。地方債では40年債が募集されていないために、40年債の購入機会は限定的である。もっとも、かつて民営化の検討も一部で囁かれた都市再生機構の40年債の信用力をどう判断するかは、容易ではないかもしれない。なお、かつては政府系機関の債券については、後に民営化されても、償還までは公的機関による債券としての性質を失わないように法律で手当されていたが、将来における対応に関しては、保障されていないのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:10/29~11/2

10月の最終週ともなると、起債市場の動きはほとんど見られない。一つには、9月末決算の発表という季節要因があるだろう。また、同時に、株式市場が不安定化しており、日々大きく値が動いているために、社債投資の目線が動き易い。本来的には、株価と社債の信用力との間には、高い相関はないはずである。しかも、発行体の企業価値の変動を示す株価と、元利金の期日通りの支払を考慮する信用力は、本来別物であるという者が多い。そもそも、社債に関して投資家は受身になりがちであり、元利金の受け取り可能性が低下しない限り、発行体の状態には無頓着でも構わないのである。ところが、株式市場においては、企業価値の変動に影響する様々な情報が反映されており、市場の効率性についての議論余地はあるものの、少なくとも信用力以上にビビッドな動きを示す指標性を有している。そのため、社債投資を行う上で、株価の動向を注視する価値がある。KMVモデルに代表されるように、株価と信用力を強く結び付ける考え方もあるが、日本の市場動向を見る限り、株価との関係は緩やかな相関傾向という程度であろう。株価には真実でない物も含めて様々な情報が織り込まれており、株価が大きく変動している場合には、社債への投資についても慎重にならざるを得ないという判断となる可能性が高い。そういった意味でも、社債募集が消極姿勢に変わるのも、この環境下無理もないのではなかろうか。

 

唯一事業債では、オリックスが5年債200億円と10年債100億円を募集している。いわゆるノンバンクと分類されるオリックスであるが、もちろんプロ野球球団を保有しているだけでなく、この週にも公表されたようにグループ傘下の不動産会社である大京を完全子会社化する等、同社の事業範囲は広い。リースを起点として、ノンバンクに近い銀行や生保・運用といった金融関連事業に拡大し、更には、今夏問題となった関西国際空港の運営を請け負ってもいる。既に単なるリース会社の粋を超えている。ただし、個人向けのビジネスは大きくなく、知名度は必ずしも高くない。レンタカー等直接個人向けのものもあり、大阪には劇場や文化館を保有しているが、首都圏ではやや弱いイメージがある。もっとも京セラドーム大阪は、90%がオリックス不動産の所有であり、オリックスバッファローズの本拠地として知られる。プロ野球の球団保有がグループ企業の信用力を示すものではないが、投資する際のサポート材料にはなるだろう。財務体質の脆弱な企業は球団保有が認められない。ちなみに現在の格付けは、R&IのA+格であり、かつてのような信用不安からは程遠い状況にある。

 

株価の変動が大きくなる一方、米国の利上げは淡々と遂行されており、日本の長期金利水準についても、上昇懸念が少なくない。日銀の強力な金融緩和の枠組みが容易に崩れるとは思えないが、海外の金利上昇から懸念される円安の進行可能性を考えると、日銀によるイールドカーブコントロールのレンジが上方にシフトされる見方も強い。金利が上昇に向かう懸念が高まれば、発行体による起債の駆け込みが起きるかもしれない。当面、海外金利と為替の状況には留意しておきたい。

国内起債市場を斬る 起債評価:10/22~10/26

下期入りしてからの起債ラッシュは峠を越えたようだ。地方公共団体金融機構のFLIPに基づく債券が募集されなかったこともあって、募集された本数も少ない。日本政策金融公庫の2年物財投機関債は、0.001%クーポンで100円00.2銭というオーバーパー発行であり、単利を計算すると0%になるのであるが、2年債で信用懸念の乏しい発行体であることが評価されて、募集された300億円をはるかに上回る投資家の購入希望が集まったようである。同年限の国債を購入したら利回りはマイナスであり、国債対比スプレッドという意味でも、投資妙味はある。しかし、利回りが0%でも投資家が購入に殺到するというのは、強力な金融緩和の弊害でしかない。

 

この週の起債では、もう一つ公的セクターの起債が面白い。日本高速道路保有・債務返済機構の第209回財投機関債である。発行年限は30年であまり珍しくないのであるが、一般的な年2回利払ではなく、満期時一括利払という形態になっている。既に同機構は40年債で同様の利子一括払の債券を発行しており、これまでは通常の年2回利払債と同日に募集してきたものである。利子一括払が割引債もしくはゼロクーポン債と異なるのは、割引債等では、期間対応で利息を未収認識するとともに、元本をアキュムレーション処理する。その結果、徐々に元本単価は償還時の100に近付くのである。一方、日本高速道路保有・債務返済機構の募集する利子一括払債においては、発行単価は償還時の元本単価と同じく100である。結果として、アキュムレーション処理は行われず、期間対応で利息の未収利息が積み上がって行く構造となっている。

 

こういったスキームが採用でき、そして投資家から受入れられるのは、発行体の信用力が高いからに他ならない。実質的に政府と一体であると想定できる高い信用力は、未収利息が回収不能になることを懸念させないのである。それでも、購入時点から会計上の期間収益は計上できるものの、基本的に償還時点までは実際のキャッシュフローが生じないのであるから、投資家のキャッシュフロー、経済価値は異なる。特に、現実のキャッシュを必要とする投資家からは、これらの利子一括払債券に対しては、投資総額の自制が必要になる。極端に言えば、年複数回の分配金支払を行う投資信託や毎年の配当支払を行う保険契約の裏付け運用として、全額こうした利子一括払債券のみを保有していると、現金は間違いなくショートしてしまう。つまり、こうした利子一括払債券は、会計上の収益認識が可能であり、同時に、現物の必要キャッシュフローを他の投資対象で賄える投資家しか購入できないのである。更に、利払が償還時点にしかないということは、期中の利払収入を利用した複利運用も出来ないということであり、複利利回りで見ると、更に不利な投資対象となっているのである。

 

結果として、利子一括払債は一般的な年2回利払債よりも、高いクーポンで設定されることになる。9月に募集された同機構の40年債で確認してみると、利子一括払の第207回債は1.373%クーポンで、年2回利払債の第208回債は1.183%クーポンであった。つまり、19bpsの価格差が設けられていたのである。30年や40年といった遠い未来にまとめて入って来る利息を、現投資担当者が責任を持って買えるのか。負の遺産を残してしまう懸念は、ないのであろうか。やはり発行体の信用力とその安定性が大きくものを言うスキームなのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:10/15~10/19

引続き、債券の募集は「金曜日集中起債」だが、本数のみに着目すると、地方公共団体金融機構がFLIPに基づく債券を、この週だけで計17本が募集されている。年限は5年から40年と幅が広い。もっとも一般的な市場公募年限とあまり重ならないように配慮されており、7年債・8年債・9年債がそのうち11本と過半を占める。それ以外の年限も端数の年限が多いものの、40年債を2本計180億円募集したことには注目しておきたい。FLIPで募集された債券はあまり市場で出回らないと期待されるが、店頭売買参考統計値を発表されているものもあり、この週でも1本130億円(5年債)、150億円(40年債)や200億円(9年債)については、十分にセカンダリーでの出合があることも想定される。

 

公共セクターを除くと募集金額の大きな社債は、電通であろう。5年債が350億円、7年債が200億円、10年債が250億円の合計800億円を募集している。R&Iの格付けはAA-格と高い水準であるが、過労死問題で社員の行動規範である“鬼十則(第5則、6則を抜粋。取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...。周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。)”が大々的に批難される等、ESG投資の観点からは問題があるとされかねない発行体である。一方で、東京五輪に向けてますますビジネスは活況であり、経営努力の熱意と事業の安定性については、疑問の余地は少ない。実際に、電通の社員に接すると、バイタリティに溢れているだけでなく、創造性も豊かであり、日本のトップ企業の一角を占めるのも違和感がない。10年債の国債対比スプレッドは+28bpsであったが、同日に募集された他の社債のいずれよりも、タイトな水準であった。

 

この週で売れなかった社債の代表がヒューリックの10年債である。1957年に富士銀行傘下で設立された不動産会社であるが、現在の社名になったのが2007年であり、新興不動産会社のイメージも強い。格付けはJCRのA+格であり、10年国債対比+35bpsの0.494%クーポンで200億円が募集された。格付会社の違いを無視すると、電通の1ノッチ下の格付けであるが、不動産という業種プレミアムが足りないとも考えられる。結果的に、募残があったようで、やはりスプレッド不足と募集額の大きさが、その原因と考えられる。8月に募集された森ビルや東急不動産ホールディングスなど、不動産の10年債が消化に苦戦している例が続いている。果たして近々に募集される予定の三井不動産の10年債は、大手の威厳を見せて順調に消化されるだろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:10/9~10/12

相変わらず、債券の募集は金曜日に集中する。プライシングを行う証券会社も、投資判断を行う投資家も、もう少し案件のタイミングが分散していたら楽なのではないかと思うのだが、事前のマーケティング段階でほぼ固まっているのであれば、募集当日は最終的な値決めの儀式みたいな物なのかもしれない。この週も月曜日が「体育の日」で祭日だったこともあり、10日に地方公共団体金融機構債と住宅金融支援機構債が募集されただけで、残りの民間事業債等はすべてが金曜日の12日に募集されたのである。

社債を募集した発行体の業種は、ノンバンク、電力、メーカー、商社、高速道路、空港運営といった顔触れである。後の二つは公共的性格を負っているが、どちらも財政投融資計画に基づく起債ではないので、現状はいずれも社債という区分にならざるを得ない。ただし、分類上の位置付けと信用力へのサポートは異なる。高速道路の運営会社に関しては、実質的に道路を保有する独立行政法人と不可分の存在であり、会社の債務は一定のルールに従って機構の債務に転換することとされている。したがって、政府の債務と同等の信用度を持つと考えられる。成田国際空港会社も、枠組みとして政府による債務保証はなく、羽田空港に東京の窓口としての地位を脅かされている。しかし、貨物やLCC等様々な取組みが進められ、容易に廃止できるものではない。したがって、R&IやJCRの成田国際空港に対する格付けが、日本国債より1ノッチ下を確保していることに意味があると考えられる。

ノンバンクや電力が目立った社債の募集であるが、その他公共セクターを含めて、年限としては5年債の募集が多かったように感じられる。実際に並べてみると、住宅金融支援機構が0.03%で250億円、西日本高速道路が0.07%で500億円、成田国際空港が0.05%で50億円、トヨタファイナンスが0.06%で200億円、三菱UFJリースが0.19%で100億円、日産フィナンシャルサービスが0.2%で250億円、三菱商事が0.1%で400億円、東京電力パワーグリッドが0.43%で500億円、クレハが0.14%で50億円となる。

クーポンは0.03%から0.43%と幅が広い。もっとも公共セクターやトヨタファイナンスは0.1%を割る水準であり、三菱商事が0.1%の境目にあって、残りの二つが0.1%を上回る水準という分布である。特に、東京電力パワーグリッドの5年債が0.43%クーポンであり、依然、R&Iの格付けがBBB+格ということもあって、高めのクーポン設定になっている。JCRのA格とは2ノッチ差が残っており、投資家がどう信用力判断をするか、特に公的サポートの判断が難しい銘柄である。同日に募集された四国電力の10年債100億円は0.444%クーポンとほぼ同程度の利回りである。どちらの投資妙味が高いと考えられるだろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:10/1~10/5

2018年度下期に入った。年度を通じての運営なら、あまり意識しないかもしれないが、それでも半分が経過したことになる。ましてや、上半期・下半期を意識したり、第三四半期入りを意識する市場参加者にとっては、大きな節目を越えたタイミングである。9月上中旬には、上期末の起債ラッシュと言っていたものが、10月頭には下期の起債シーズン入りと言っているのだから、その表現と現実にはややギャップさえ感じる。もっとも、ビジネスの根本には、タイミングがあり、それを裏付けとしたキャンペーンがあるのだから、10月に入ったところで、発行体も投資家も動くのが、決して奇異な話ではない。

新しい四半期に入ったところですぐに動く発行体としてイメージされるのは、電力や公的セクター、更には、銀行とノンバンクといったところだろうか。実際に、中国電力が3日の水曜日に10年債を募集したのが、今年度下期の口開けとなった。米国の長期金利上昇を受けて、日本の長期金利も安定せず、やや高めに推移していたことで、投資家の購入姿勢は消極的であり、どうも中国電力の10年債は消化に苦戦したようである。単なる国債対比スプレッドの水準が問題であったというよりも、ベースとなる長期金利の水準が安定しなかったことで、発行体と投資家の目線が合わず、結果的に投資妙味が乏しいと判断されたものと考えられる。その後、関西電力が5年債と10年債、電源開発が15年債を募集している。なお、電源開発債は電気事業法の定める電力債ではなく、一般担保付となっていないことに留意したい。もっとも社債間限定同順位特約の対象には担保提供制限の他に、は留保資産提供制限となっており、担付切換条項や特定資産留保条項くらいの特約しか付していないのに、社債管理者を設置しているのは疑問である、

ノンバンクの動きも早かった。中国電力以外は、ほとんどの債券募集が5日の金曜日に集中したが、5日だけでも、東京センチュリーの3年債及び5年債、ジャックスの5年債及び10年債、アプラスファイナンシャルの5年債といった顔触れが、早速、社債を募集している。銀行では、名古屋銀行が劣後債を募集しており、公的セクターでは、地方公共団体金融機構が20年債及び30年債、日本政策投資銀行が3年債・5年債・10年債、阪神高速道路が3年債、首都高速道路が5年債を募集している。

なお、東京センチュリーの5年債はグリーンボンドの要件を満たしており、太陽光発電設備のリースに関するリファイナンスに充当されるということであるが、この延長で行けば、将来的には“何でもグリーンボンド”ということになって、希少性が失われることになるような気もする。やはり、もっと環境改善に密接なものでないと、投資家・発行体のイメージ向上に利用されるだけでなく、環境省や認定NPO団体等にも利用されることになろう。今後も、ノンバンクやメーカーから、環境債やグリーンボンドの募集予定が公表されている。引受証券会社も投資家も具体的な、取組内容の吟味を怠ってはならないだろう。

国内起債市場を斬る 2018年度半期末特別号:格付けのタイムホライズンと超長期債

この9月に募集された民間企業の超長期社債(満期一括償還に限る)を順に挙げると、日本たばこ20年債、名古屋鉄道20年債、住友商事20年債、阪急阪神ホールディングス20年債、電源開発20年債、相鉄ホールディングス15年債、日本航空20年債、JR東日本20年債・30年債・40年債、光通信20年債といった顔触れになる。超長期債に投資するメリットは、何と言っても利回りの高さにある。イールドカーブが順イールド形状になっている限り、国債利回りは年限の長い方が高い。社債の場合には、上乗せのスプレッドの水準によって逆転する可能性もある(例としては、JR東日本40年債のクーポン1.246%に対し、光通信20年債は2.12%クーポンである)。

超長期債に投資する際に投資家が考えなければならないのは、投資によって負うリスクである。近似的には、価格変動リスクをデュレーションで、信用リスクを格付けで測るというのが一般的な投資家ではなかろうか。前者に関しては、現在のような低金利が大きく変動した場合には、デュレーションの計測だけでは不十分である。デュレーションだけでは近似しきれない金利変動の影響については、コンベキシティを考慮すべきであろう。しかし、もっと大きな問題は信用リスクを評価する際の格付け利用にある。

格付けに関しては、超長期債の抱える信用リスクを適切に示す指標ではないと断言するのは、言い過ぎだろうか。そもそも格付けとは、一民間企業である格付会社が発行体及び当該債券に対して付した信用度合いの評価である。監督官庁に届出しており、定期的な検査を受けていることから、専門的な評価機関であることを否定しないが、果たして格付けのタイムホライズンは、どの程度の期間だろうか。

一般的に企業が作成している中期計画は、3年~5年といったところだろう。それに、各業種の専門アナリストが長期的な当該業界の事業環境と、当該企業の先行きを推計しても、10年以上の先を見通すことは不可能だろう。9月に超長期債を募集した企業の中でも、日本航空が経営危機に陥り社債をデフォルトしたのは2010年のことであり、まだ、10年も経過していないのである。幾ら公的資金による支援があったとは言え、破綻して10年以内の企業が20年債を募集しているのは、奇異な姿であろう。結局のところ、超長期債の信用リスク評価においては、格付けは役に立たないということを肝に銘じるべきである。

超長期債の投資に際しては、格付けを見るだけでなく、その先の保有期間に対する業界及び発行企業の分析を、個々の投資家が真剣に実施して安全という判断を下してから投資を実行しなければ、投資家としてのスチュワードシップに反すると言っても良いだろう。個別企業の遠い将来を予想するのは難しく、ウェイトとしては業界分析と相対的な位置付けが主体にならざるを得ない。結局のところ、将来の業界像を比較的容易に推測できるのが、規制業種であり、電力・ガス・鉄道といったところが、超長期債の主な発行業種になるのは、自然のことなのである。それ以外の業種については、真摯に20年後のその企業がどういう状況にあるかを考えて投資すべきである。また、将来の20年先が難しいのなら、20年前がどのような会社であったかを考えることにも意味があろう。年限の長さはデュレーションの長さに繋がり、結果として価格変動の大きさをもたらす。それほど、超長期債投資におけるクレジットリスクを初めとするリスクファクターの分析と投資判断は、容易なものではないのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:9/18~9/21

今年の9月は、敬老の日と翌週の秋分の日と、三連休が二度続いた。実質的な上期の起債シーズンは、14日で終わったと思ったが、この週を狙って案件が入り込んできた。募集された一つは、中日本高速道路の第74回4年債700億円である。区分としては社債になるが、純粋な民間事業会社の社債ではなく、日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的債務引受条項が付されており、実質的には、財投機関債と同等の信用力を有していると考えられている。高速道路運営会社を破綻させることは現実的でないし、いざという時は政府に夜支援が期待できるのであるが、歩的な債務保証が付されておらず、「暗黙の政府保証」に留まると解される。なお、債務が日本高速道路保有・債務返済機構に順調に移管されているかどうかを確認することも必要であり、「暗黙の政府保証」を期待するには多くの作業前提を要する。

もう一つは、地方公共団体金融機構のFLIP債である。四半期の最初の月に複数のFLIPに基づく債券の募集されることが多いが、今回は四半期末に1銘柄のみという変則的な募集であった。取扱いは、三菱UFJモルガンスタンレー証券であり、19年債50億円が募集された。FLIPに基づく地方公共団体金融機構債は、公募とされているものの、ほとんどが30億円から50億円での募集が多く、金額面からも、また、募集の状況からも限りなく私募に近い位置付けとされる。ただし、地方公共団体金融機構は、地方公務員共済組合連合会等の公的共済団体向けに縁故債を発行しており、これらは完全な私募とされている。FLIP債については、日本証券業協会から公社債店頭売買参考統計値も公表されている。

実質的に上期の債券市場の募集は終了したが、募集直前に北海道胆振東部地震の発生で、募集を見送られた北海道電力の電力債は、今後に被るであろう大きな影響が懸念される。募集直前に大きな環境変化が生じたために、募集を延期したのは適切な判断であったが、やや単なる地震の影響から数ヶ月の募集延期ということにならない可能性もある。地震からの復旧・復興に時間がかかることだけでなく、道内全域がブラックアウトしたことで、北海道電力の経営に与える影響は小さくない。特に、苫東厚真火力発電所が直接被った被害だけでなく、同発電所への一極集中によるリスクが懸念されるようになっている。背景には、泊原子力発電所が再稼動できていないこともあるが、苫東厚真火力発電所の使用燃料は石炭である。石炭火力発電に対して環境面から投融資を控える機関投資家も増えてきており、今後の北海道電力は、財務面における収支の点のみならず、ビジネスモデルに対する観点からも、見直しが必要になって来る可能性が高い。