国内起債市場を斬る 年度初特別号:2018年度の起債環境は

平成30年度である。しかし、予定ではその次の年度は途中で平成31年度から新元号の元年度に変わるために、頭の切替えが求められることになる。官庁では元号の使用が一般的であるが、民間での使用は強制されるものでもない。有名な元号法の文言を見ても、条文は「元号は、政令で定める。元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」の二つしかない。若者を中心に元号離れが進むのではないか。特に、新しい元号は、次代の天皇陛下がよほど長く公務を取られない限り、平成を大きく越えることにならないのではないか。30年程度の元号が数代続くならば、元号の使用は敬遠されるだろう。

とりあえず、日銀の新執行部を現政権が指名し国会の承認を経たため、金融政策は当面変更がないものと期待される。米FRBは利上げを実施しているものの、長期金利への大きな影響はない。仮に米長期金利が上昇して円安が進めば、日本も金利上昇へと誘導する可能性がわずかにある。しかし、円安は輸入物価上昇を通じて、物価全般の水準を押し上げる可能性がある。そういう意味では、輸出の低迷から企業業績を圧迫しない限り、金融緩和は継続されるだろう。つまり、中東や極東の政治的な混乱による金融市場の変動がない限り、金利の上昇は期待し難いのではないか。

加えて、信用スプレッドの変化もなかなか難しそうである。企業業績は一般的に良好であり、賃金の上昇は限界的であり、その他の物価も不動産路線価格の一部を除いては安定的である。企業収益を押し下げる要素はなかなか見当たらない。東京オリンピック前に建設や不動産がボトルネックに陥る可能性がないとは言えないが、中国マネーの撤退などがあったとしても、信用スプレッドの大幅な拡大に繋がるインパクトがあるとは思えない。規制の変更や資源の枯渇といった外部環境の変化も想定される範囲にはない。

当面、金利先高感がないので、起債が殺到することもないだろうし、投資家も淡々としたスタンスでの社債購入を続けるのではないか。無理して買い急ぐ構造にはないし、タイトなスプレッドの社債を敢えて購入する必要もないだろう。もっとも安倍政権が崩壊した場合に、政府からの支援を失った日銀執行部がどのように判断するかは見物であるが。景気が回復しても失速しても、金利や信用スプレッドの変化を期待できないというところに、日本経済の根深い病根があるようにも思える。