国内起債市場を斬る 起債評価:4/23~4/27

起債市場はGWが近付く頃になると、3月期決算の発表を受けて、動きが鈍くなる。これは例年のパターンであって、特に違和感はない。前週までは、財投機関債や電力、ノンバンクといった起債が目立ち、本数だけなら四半期毎の地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債が幅を利かせていたのである。ところが、4月最終週ともなると、債券の募集は激減である。条件決定から払込までの期間を考えると、どうしてもGWの存在が邪魔してしまうのである。営業日ベースでは数日でも、カレンダーベースだと1週間を越えるといったことになりかねないのである。GWの日本以外にも、レーバーデイの休暇が入る国はあるが、海外の多くの国ではこのタイミングでの大型連休はあり得ない。その間の市場変動を怖れると、カレンダーの面でも債券の募集と投資は、両サイドからためらわれるのである。

わずかに募集された社債の中では、単独引受となった三井不動産の10年債が売行き難航したことが知られている。近年はイールドカーブ全体の水準低下もあって、利回りを求める投資家がクレジットリスクを負って投資年限を長くすることが見られる。しかし、そもそも不動産の10年という年限は、不動産価格のみならず経済の変動サイクルを考えると、アップサイドとダウンサイドとを経験する可能性が高い。よもや三井不動産のデフォルトを意識しなければならないようなことは考え難く、社債の時価評価に目を瞑り(つむり)元利金の支払だけを考えるならば、よっぽどの日本経済の変動や三井不動産のもので想定できないような不祥事の発生しない限り、このリスクを負うことに心配はないと見るのであろう。それでも、時価評価を考えるならば、現状で、R&IでA+格とJCRでAA格という格付けが上限に変動する可能性がないとは言えないのである。特に、東京オリンピック等を控えて、建設のみならず日本経済全般が上昇基調にある中では、ダウンサイドの意識を持たざるを得ない。

今回の起債は国債対比+24bpsでプライシングされ、クーポンは0.305%の水準で1000億が募集された。翌日に募集された格付けがA(R&I・JCR)格のニフコの10年債が国債対比+33bpsでプライシングされ、また、前週末に募集されたデンソーの10年債が国債対比+27bpsであったことを考えると、明らかにタイトという評価になる。デンソーの格付けは、R&IでAA+格である。幾ら3年限併せて900億円の大型起債だったとは言え、格付けが3ノッチも上の社債よりタイトなスプレッドというのでは、投資家も手がなかなか出ないだろう。100億円の小額起債だから可能になったプライシングなのではないか。