国内起債市場を斬る 起債評価:6/25~6/29

株主総会の集中する28日を挟むと、起債市場は動きづらい。でも、集中日は3月決算企業のスケジュールであり、それ以外のタイミングが決算の企業は、逆に募集に適した期間とも言える。もっとも投資家の多くは3月決算であり、社債等の購入者側が動き難い可能性もあるのだが、基本は供給者である発行体の問題である。

この週に社債を募集したのは、イオンモールと東京都競馬の2社である。前者は2月末決算であり、後者は12月末決算である。前者が2月末決算であるのは、親会社であるイオンが小売業で、2月末決算を採用しており、それにタイミングを合わせているものと考えられる。小売業の多くが2月末決算としているのは、3月末が年度末で大きく商売が増えるタイミングであり、逆に2月・8月は気候的にも売上が少なくなるものが多いからである。極めて合理的であり、すべての企業が3月末決算を採用しなければならないというものではない。

いずれの社債も順調に消化された模様であるが、イオンモールの起債は年限構成が面白い。最終的に募集したのは、3年債150億円、7年債100億円、10年債200億円、20年債50億円の計500億円と巨額に上っている。3年債は日銀オペ見合いという特殊ニーズがあるとしても、それ以上の年限については、やや投資家側の判断は起債が少ない中で視力が鈍っているのではないかという危惧を感じさせる。特に、少ない額であるが、20年債の募集については、積極的に投資する理由を見出し難い。クーポンが1.05%と絶対水準の高さを確保しているとは言え、親会社のイオンにおける小売業の苦戦は否定できない。総合スーパーが既に時代遅れであるだけでなく、ミニストップはコンビニの中でのポジショニングに苦戦している。近年は金融等に事業を拡張しているものの、将来の限界が見えはじめている。特に、アマゾン等ネットショッピングに対する劣位は顕著である。

加えて、イオンモールの主なビジネスであるショッピングモール自体が廃れはじめている。地方では、イオン等の総合スーパーを中核とするショッピングモールが出店し、既存の商店街をシャッター閉鎖に追い込み、その後、人口動態の変化等を反映して撤退するという減少が散見されている。つまり、ショッピングモールのディベロッパーについては、明確な限界が見えはじめているのである。米国でのトイザラスの破綻は、ショッピングモールの一翼を担った重要小売店舗が、インターネットショッピングに勝てないことを示している。日本のような人口減少社会で地方の消滅が迫っているとされる中で、イオンモールの長期債や超長期債に投資することが正しいのだろうか。単なる利回りの問題ではないのである。