国内起債市場を斬る 起債評価:9/10~9/14

実質的に上期の起債シーズンの最終週である。しかも、最終営業日である金曜日に向けて、案件は集中する。民間の事業債だけ見ても、水曜日は2社計4本で500億円が募集され、木曜日は4社計6本で900億円と増え、この週の金曜日は6社計13本で計1,900億円と倍々の増加である。一つの回号あたりで見ると、500億円というT&Dホールディングスの劣後債が大きいものの、それ以外にも50億円といった実質的に最低金額に近い募集も少なからず見られている。基本的には、1回号100億円での募集が多い。

募集年限では、相変わらず超長期が少なからず見られる。電源開発の20年債100億円、T&Dホールディングスの劣後債(30年NC10年)500億円、光通信の20年債250億円、相鉄ホールディングスの15年債100億円、東日本旅客鉄道の20年債100億円・30年債200億円・40年債150億円、日本航空の20年債100億円といった顔触れが超長期債の募集であった。電力や鉄道といった安定的な業種については超長期債の募集が適切と考えられるのでるが、果たして光通信の20年債はどうか。決して社名にあるような通信事業が主体ではなく、携帯電話ショップ・中小企業向けOA機器や通信回線等の取次ぎ、保険代理店といった複合企業である。しかし、超長期の与信に適している企業とは思えない。確かに2.12%クーポンは利回りの絶対水準として魅力的なのであるが、20年前からの光通信の経営状況の推移を思い出すべきなのである。

起債ラッシュの中で、あまり起債の多くないセクターが動いたことにも着目しておきたい。特に、メーカーによる起債が幾つか見られている。NECは5年債300億円・7年債と10年債各100億円で計500億円を募集し、出光興産は7年債と10年債各100億円、日立造船は3年債50億円と7年債100億円、サンケン電気は3年債と7年債各50億円、シチズンは5年債100億円と複数のメーカーが社債を募集している。ノンバンクや電力、鉄道といった機敏に動くセクターと異なって、動きの鈍いメーカーが社債募集に動いたことも上期末のタイミングという一現象の特徴であろう。

最後に、格付けの観点からは、BBBゾーンの起債が複数見られることにも留意しておきたい。アイフルがBBBゾーンに満たない私募債を募集したことが報じられているが、公募債でも、スプリットレーティングの片方を含むと、光通信、日立造船、サンケン電気、阪和興業といった発行体がBBBゾーンの起債である。低格付け債に対する投資家の姿勢は必ずしも大きくは変化していないが、利回りの絶対水準を求める動きは根強く残っているようだ。