国内起債市場を斬る 起債評価:10/1~10/5

2018年度下期に入った。年度を通じての運営なら、あまり意識しないかもしれないが、それでも半分が経過したことになる。ましてや、上半期・下半期を意識したり、第三四半期入りを意識する市場参加者にとっては、大きな節目を越えたタイミングである。9月上中旬には、上期末の起債ラッシュと言っていたものが、10月頭には下期の起債シーズン入りと言っているのだから、その表現と現実にはややギャップさえ感じる。もっとも、ビジネスの根本には、タイミングがあり、それを裏付けとしたキャンペーンがあるのだから、10月に入ったところで、発行体も投資家も動くのが、決して奇異な話ではない。

新しい四半期に入ったところですぐに動く発行体としてイメージされるのは、電力や公的セクター、更には、銀行とノンバンクといったところだろうか。実際に、中国電力が3日の水曜日に10年債を募集したのが、今年度下期の口開けとなった。米国の長期金利上昇を受けて、日本の長期金利も安定せず、やや高めに推移していたことで、投資家の購入姿勢は消極的であり、どうも中国電力の10年債は消化に苦戦したようである。単なる国債対比スプレッドの水準が問題であったというよりも、ベースとなる長期金利の水準が安定しなかったことで、発行体と投資家の目線が合わず、結果的に投資妙味が乏しいと判断されたものと考えられる。その後、関西電力が5年債と10年債、電源開発が15年債を募集している。なお、電源開発債は電気事業法の定める電力債ではなく、一般担保付となっていないことに留意したい。もっとも社債間限定同順位特約の対象には担保提供制限の他に、は留保資産提供制限となっており、担付切換条項や特定資産留保条項くらいの特約しか付していないのに、社債管理者を設置しているのは疑問である、

ノンバンクの動きも早かった。中国電力以外は、ほとんどの債券募集が5日の金曜日に集中したが、5日だけでも、東京センチュリーの3年債及び5年債、ジャックスの5年債及び10年債、アプラスファイナンシャルの5年債といった顔触れが、早速、社債を募集している。銀行では、名古屋銀行が劣後債を募集しており、公的セクターでは、地方公共団体金融機構が20年債及び30年債、日本政策投資銀行が3年債・5年債・10年債、阪神高速道路が3年債、首都高速道路が5年債を募集している。

なお、東京センチュリーの5年債はグリーンボンドの要件を満たしており、太陽光発電設備のリースに関するリファイナンスに充当されるということであるが、この延長で行けば、将来的には“何でもグリーンボンド”ということになって、希少性が失われることになるような気もする。やはり、もっと環境改善に密接なものでないと、投資家・発行体のイメージ向上に利用されるだけでなく、環境省や認定NPO団体等にも利用されることになろう。今後も、ノンバンクやメーカーから、環境債やグリーンボンドの募集予定が公表されている。引受証券会社も投資家も具体的な、取組内容の吟味を怠ってはならないだろう。