国内起債市場を斬る 起債評価:12/10~12/16

いよいよ年内最後の債券募集である。前週7日の案件集中に比べれば、もはや起債ラッシュではない。7日はメーカー、ノンバンク、電力・ガス、鉄道、財投機関等銀行を除いて主要セクターが勢揃いした感すらあったが、既に12月10日を過ぎると、消化試合的な雰囲気も多少して来る。7日は楽天の劣後債が、3本で計2,990億円も募集されたために、本数と金額の両面で大きな数字となったが、この週は三菱UFJグループの永久劣後債が2本計1,550億円募集されており、募集金額としては決して少ない訳ではない。

13日に募集された社債は、富士フイルムホールディングスと三菱ケミカルホールディングスの化学対決となった。富士フイルムホールディングスは、既に写真フィルムだけのメーカーではない。元々カメラ等も取扱っていたが、近年では、更に、印刷機器に拡大しているだけでなく、化学領域や医薬品、化粧品等までに領域が拡大している。そもそも持株会社で多角化経営していると、伝統的な業種一つに区分することが難しくなっているのである。株式投資において、東証業種分類に基づいて偏りを作らないといったコントロールをすることもあるが、そもそも業種分類自体の意味が低下していると言わざるを得ない。富士フイルムホールディングスがそれの類し、JXTGホールディングスへの投資を石油・石炭商品に分類し、その分ほど出光興産や昭和シェル石油への投資を抑えることが適切だろうか。

14日の金曜日には、様々な10年債が競合した。小田急電鉄、雪印メグミルク、H2Oリテイリング、椿本チェイン(5年債50億円とともに)が、いずれも100億円の10年債を募集している。業種で言えば、陸運(鉄道)、食料品、小売、機械と様々であるし、格付けも、順にAA-(JCR)、A-(R&I)、A-(R&I)、A(JCR)と分散している。クーポンは、同様に、0.33%、0.45%、0.48%、0.52%と並ぶ。必ずしも格付けの順と一致しないのは、業種の差など様々な要因が考えられるだろう。公表されている国債対比のスプレッドは、+28bps、+40bps、+43bpsと並んでおり、椿本チェインはスプレッドを公表していないようである。より格付けの低い雪印メグミルクやH2Oリテイリングより大きなスプレッドを表示しないように配慮したとも考えられる。しかし、そもそも格付会社がR&IとJCRで異なり、市場参加者は一般的には、両格付け会社の評価には平均的に1ノッチ弱の差が存在すると考えていることから、実質的の同程度の信用力と見られている可能性が高いために、敢えて比較されないように工夫したという憶測も当たっているのかも知れない。