国内起債市場を斬る 令和元年特別号:ハイイールド債への道

日本に新発のハイイールド債市場は存在しないとされる。投資家の需要が存在しないとされて来たことが主な要因と考えられる。しかし、GPIFは格付けがBBB-格に満たない債券を投資対象に加えるとしており、投資家の需要という側面は緩和されつつある。GPIFは国民年金及び厚生年金の積立金を運用している独立行政法人であり、被用者年金一元化の観点からは、今後同様の年金積立金を運用する国家公務員共済組合連合会や地方公務員共済組合連合会及びその傘下の各共済組合等、更には、日本私立学校振興・共済事業団も、右に倣って投資対象を意識する可能性が高い。

従来、ハイイールド債に関しては、新発債市場は成立し難いものの、フォールンエンジェル(Fallen Angelというカクテルでないが)と呼ばれる格下げによるハイイールド債のみが存在するとされて来た。ところが、4月19日にアイフルの行った発行登録が、新発ハイイールド債募集の可能性を示している。取得している発行体格付けは、BB-(R&I)格及びBB(JCR)格であり、社債に付される格付けが発行体格付けを上回るには、担保や保証等が必要であり、無担保の社債であれば、ハイイールド債となる。発行登録書の内容は、詳細未定であるものの、起債観測として上がっている報道では、年限は1.5年で野村證券が主幹事を務める模様であり、5月以降に社債募集を行う可能性があるようだ。

同社の既発債は既にすべて償還しており、流通市場の実勢を基に新発社債に付すスプレッドの適正水準を見出すことは簡単ではないだろう。低格付けや新規の取組みとなる社債のプライシング及びマーケティングに関して、主幹事予定の野村證券には実績がある。買入償却を経て近年の光通信による社債やコベナンツを付した平和不動産債、更には、同残存の参照国債が存在しない三菱地所の50年債など、実績は枚挙に暇はないが、今回は慎重に投資家の需要を調査することになるだろう。そもそも、日本証券業協会の提案した社債管理補助者(会社法の改正によって今後制度化される可能性もあるが、第三者のためにする契約として先行的に導入することは可能)を付すのかどうか、発行体及び主幹事証券の取組みが注目されるところである。

日銀のマイナス金利政策によって国債対比スプレッドの機能しない1.5年という年限では、スプレッドの議論よりも絶対的な金利水準での検討ということになるだろう。米国の社債市場の例を見ると、投資適格とされる水準の社債に比して、ハイイールド債のスプレッドは格段に大きな水準が付される。また、景気が下向きの局面では、低格付け債のスプレッドは厚くなる傾向にある。どういった利回りで社債の募集に漕ぎ付けられるのか、こちらについても注目してみたい。