国内起債市場を斬る 起債評価:6/24~6/28

引続きこの週も3月期決算企業の株主総会シーズンであり、社債の募集は多く見られない。実際に社債を募集したのは、サムライ債を除くとイオンモールと東海カーボンの2社である。前者は、親会社が小売ということもあって2月決算であり、後者は12月決算企業である。したがって、この時期に株主総会を開催する必要はない。そもそも株主総会が社債の募集に直接影響するものではないが、経営時の交代など色々なイベントが発生することもあって、投資家に対する影響の可能性を考えると、社債に対する需要は大きくないだろうと考えられる。そもそも企業側も、株主総会の諸作業で忙しく、社債の募集に係わっていられないというのもあるだろう。

イオンモールの募集した社債は、前週までのヒューリックや楽天と同様に、多年限の分散薄幸である。楽天は、3年債・5年債・7年債・10年債・15年債と5本立てであったが、イオンモールは3年債・7年債・10年債・20年債の4本立てであった。楽天の格付けはA(JCR)格であり、イオンモールはA-(R&I)格と、大きな差はない。加えて、楽天は通販を中心にしたコングロマリットであり、イオンモールは大手小売のイオングループに属する店舗開発等不動産業を担う。似ているようで、必ずしも完全には重ならない二社である。

同じ年限の起債を比較すると、3年債では、楽天が0.09%クーポンで、イオンモールは0.05%クーポン。7年債では、楽天が0.35%クーポンで、イオンモールは0.29%クーポン。10年債では、楽天が0.45%クーポンで、イオンモールは0.4%クーポン。いずれも、イオンモールの方が低利回りであった。確かに楽天のビジネス内容は変動性が高いと思われる一方、イオンモールに関しても、地方の人口減少や小売と不動産のビジネス領域の先行きを考えると、決して安泰とは思えない。イオンモールの10年債や20年債については、格付けだけで評価できるものではないし、そもそも格付けのタイムホライズンは3年から5年しかないことを考えると、投資家としては慎重に臨むべきだろう。もっとも楽天は5本立てで計800億円の募集で、イオンモールは4本立てで計500億円と少ない募集金額であった。

なお、東海カーボンの社債は第1回と初の公募債発行であり、100億円の小額募集であった。炭素関連の電極や摩擦材といった製品のメーカーであり、希少性が強い。社債募集の少ないこのタイミングでの起債は、絶好のタイミングであったと言って良いだろう。