国内起債市場を斬る 起債評価:10/28~11/1

10月最終週に債券の募集は、まず行われない。しかし、かなり以前から、11月1日に光通信によって社債が募集されるという観測は上がっていた。前週の時点では、募集年限が10年・20年・30年の3本とされ、10年債及び20年債は100億円程度の募集が見込まれており、30年債については、投資家のニーズ次第とされていたようである。実際に11月1日に募集されたのは、10年債が90億円、20年債が100億円で、30年債が75億円となった。

同社債の格付けは、R&I及びJCRのA-格である。格付けの面では10年債を募集することに必ずしも違和感はないが、同社の事業内容を考えると、20年債及び30年債に投資するのは躊躇される。鉄道や電力・ガスのような安定的な事業基盤はなく、また、基礎財のメーカーでもない。非製造業に関しては、超長期の起債は慎重に考えざるを得ないというのが大原則である。そもそも、格付けの有効年限は、会社の中期計画や業種特性を考慮しても、3年ないし5年といった水準でしかない。それを大きく上回る年限に関しては、投資家が自己責任で投資判断を行うしかないのである。同社の場合、人によっては10年債ですら積極的な投資対象にはし難いのに、20年債や30年債となると、もはや投資を越えて投機の領域に近い。同社の創立は1988年、東証一部上場は1999年である。辛うじて20年前がイメージできるところだ。投資家は、同社の20年前、30年前がどうであったかを思い出して、逆にこれからの20年後、30年後を考える作業が必要であろう。

日本銀行による低金利政策の影響下であっても、光通信の社債は20年債で1.7%クーポン、30年債で2.5%クーポンと、極めて高水準の利回りとなっている。最近の社債市場は消化不良ではないかという観測(10月25日日経朝刊)が発せられており、極めて高い水準のクーポンが付されていても、同社の社債が3年限合わせても265億円しか募集成立しなかったことは注目してよいだろう。投資家が闇雲に利回りだけを求めているわけではなく、リスクに見合った年限や利回りといった発行条件を吟味しているものと考えられる。また、金融資本市場がグローバル化している中で、日本国内の社債市場のみに拘るというスタンスが薄れているのではなかろうか。こんなに潰れたスプレッドであれば、国債で十分といった考えもできるし、マイナス利回りの国債が嫌なら普通預金のままで良いと公言する投資家も少なくない。

株式はグローバル市場化しており、それは、日本企業の海外収益依存度の上昇とともに、国内株と外国株の相関の高まりとして観測されている。また、国内の低金利を敬遠する投資家は、外債や海外のオルタナティブ資産への投資に注力しはじめている。振り返って、日本の社債市場を見ると、現在もR&IとJCRという国内系の2社による格付けが実質的な寡占状況にある。この現状は、海外系格付会社が収益性の低さから退出して行った結果であるが、このままガラパゴス状態がいつまでも継続するだろうか。日本の金融資本市場の在り方について、改めて検討すべき時期に来ているものと思われる。株式や他の資産がどんどんグローバル化して行く中で、債券市場のみがドメスティックな状態のままで良いはずがない。