国内起債市場を斬る 起債評価:11/11~11/15

未だ、国内起債市場は本格稼働とはなっていない。前週に続いて、まだ、公共債が主体となっている。地方公共団体金融機構が毎月募集する10年債350億円の他、半期に1回ペースの珍しい5年債を100億円募集している。5年債の利回りを前週の住宅金融支援機構と比較すると投資妙味は格段に落ちるが、市場実勢という観点からはおかしくない水準である。やはり国債がマイナス金利となっている年限では、一般債の目線は難しい。なお、10年債の利回りは、国債対比+16bpsのスプレッドと発表されている。

同じく公共債セクターでは、東日本高速道路と日本高速道路保有・債務返済機構が債券を募集している。前者は、5年債300億円・7年債200億円・10年債400億円と計900億円の募集である。前述の地方公共団体金融機関の10年債と同様に、東日本高速道路の10年債も国債対比+23bpsのスプレッドとされている。10年国債利回りが大きく動く中でのプライシングとなったこともあって、絶対水準オンリーでは投資家のニーズが確保できなかった可能性もあろう。本来のあるべき姿に戻りつつあるのか、それとも暫時の姿なのか、今後の動向を見極めたい。日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債は40年である。国債対比+41bpsのスプレッドとされるが、クーポンは0.882%と1%に満たない。40年という途方もなく長い年限を考えると、例え発行体のデフォルト・リスクがほとんどないにしても、満期持ち切り目的ではない投資家としては、此のクーポンでの資金固定のリスクは、十分に考えるべきであろう。

民間で唯一の起債が、阪急阪神ホールディングスによる10年債及び20年債100億円ずつの募集である。両年限とも国債対比のプライシングが行われ、10年債は+31bps、20年債は+45bpsとされる。この週の10年債のスプレッドを並べると、準地方債とも言える地方公共団体金融機構債が+16bps、準財投機関債と言えるが形式的には社債である東日本高速道路債が+23bps、阪急阪神ホールディングスの社債が+31bpsとなる。格付けは、前2者がAA+(R&I)格であり、阪急阪神ホールディングスがA+(R&I)格であるから、発行体の規模的な格差は整合的であると言えよう。しかし、AA+格とA+格の差は3ノッチと大きく、それでありながらスプレッドの差が10bpsにも満たないというのは、金利水準の低さそのものに影響されたと見るべきであり、投資家は割高感と流動性リスク格差を認識すべきであろう。

これから12月中旬に向けた約1か月間が年内の新発債に関する最終募集期間であり、起債観測はメーカー、鉄道、通信、建設、商社、小売り、ノンバンク等様々なのものが見られている。年内の各週の金曜日は、慌ただしい展開になりそうだ。