国内起債市場を斬る 起債評価:11/25~11/29

師走である。それでも、金曜日に条件決定が集中する慣習は変わらない。証券会社も投資家も仕事が集中して大変ではないかと思うのだが、条件決定の前にほぼ大勢が決しているために、募集当日に色々と集中しても問題ないのか。それはそれで、現在の募集実態が適切に運営されていないということとも思えるの。引受証券は、外部から指弾されないよう、法律や規則のみならず、ノブレスオブリージュ(noblesse oblige)に則った行動が求められる。

金曜日の29日に多くの募集案件が集中しているが、比較的に知名度の高くないメーカー等の条件決定が多くなったことが特徴的な動きとして挙げられるだろう。5年債を募集した日本冶金工業は、第1回債を募集している。デンカの7年債は第22回債と回数は多くなっているが、決して同社はフリークエントイシュアーとは言えない。住友林業(現在では建設業に分類されており、メーカーではない)は、10年第9回債及び20年第10回債を募集している。戸田建設も第5回の10年債を募集した。KHネオケムは、第1回の5年債を募集している。KHネオケムは、キリンホールディングスの傘下に入った協和発酵グループから、分離独立した化学品メーカーである。これらの企業の中では、住友林業がTVCMで見かけることがあるくらいで、他の企業は、一般消費者には直接触れる機会の少ない企業群であろう。なお、こういったレア物銘柄と見られる発行体の社債は、募集額が小さくなりがちである。日本冶金工業とKHネオケムは50億円の募集であるし、デンカが150億円を募集した以外は、各回号100億円ずつである。

中国電力の第421回債は、25年と珍しい年限で募集されている。電力会社の超長期起債も増えて来ているが、20年債や30年債に比べると25年債はほとんど見ることがない。20年や30年は国債の新規発行があるため、プライシングが容易であるというのが教科書的な説明である。新発の国債とクーポン水準が大きく乖離しないために、リスク把握や管理が容易であるという指摘もある。もっとも、近年のような低金利に加えて、金利変動幅も小さくなっていると、25年といった新発国債とリンクしない年限でも、条件決定は難しくないだろう。今回の中国電力の25年債は国債対比のスプレッド・プライシングで条件決定されたが、木曜日の28日に募集された三井化学の20年債は絶対水準でクーポンが決定されている。基軸が見え難い中でのプライシングであるから、20年や30年といった年限への拘りを捨てても良いだろう。今後は地方公共団体金融機構が募集するFLIP債のように、端数年限での起債がもっと増えても良いのかもしれない。