国内起債市場を斬る 起債評価:12/2~12/6

12月に入ると、起債市場も年内最後の募集タイミングとなり、まさに佳境に入る。条件決定の物理的期限が月央に迫っていることもあって、起債観測による投資家への打診開始はそろそろタイムリミットである。このような状況でも、募集の多くが金曜日に集中するのは相変わらず困りものだ。特に、12月最初の週は、財投機関債も含めて、6日金曜日への集中が著しい。社債だけに限っても、この週は、3日火曜日1件、4日水曜日も個人向け社債の条件決定を除くと4件、5日木曜日1件といった分布である。6日に条件決定された社債は、機関投資家向けに限っても、30件を超える。

6日の募集で集中したのは、社債の本数だけでなく、いわゆるハイブリッド債が顕著である。結果的にハイブリッド債だけでも、募集金額が大きくなっている。既に4日水曜日にも、東海カーボンが250億円の劣後債を募集している。劣後債の評価はR&IのBBB格で、期限前償還を前提とすれば、0.82%クーポンの5年債である。もし期限前償還されなければ、30年債になってしまうのだが。しかし、6日金曜日のハイブリッド債募集は、この東海カーボン債であっても、陰に隠れてしまう。

6日には、大阪ガスが60年債2本(期限前償還は7年及び10年)計1,000億円を募集し、三菱UFJフィナンシャルグループは10年債2本(1本は期限前償還5年)計500億円を、住友化学は60年債2本(期限前償還は5年及び10年)計2,500億円を、名古屋銀行は10年債期限前償還5年100億円を募集し、イオンは30年債期限前償還10年及び35年債期限前償還15年計800億円を募集している。全部を積み上げると、合計で4,900億円ともなる。大阪ガス債は、R&IのAA-格と劣後債では異例の高格付けであるが、住友化学債はR&IのBBB+格及びJCRのA-格と片脚がBBBゾーンに突入しており、イオン債は東海カーボン債と同じく、R&IのBBB格となっている。

東海カーボンとイオンの劣後債を比べると、期限前償還の時期が異なるものの、当初クーポンが0.82%に対し、1.8%及び2.52%と全く異なる水準となっている。先行きの不透明感が高い小売という業態の特性を強く反映したものである。しかし、単純なイオンの社債で、10年債や15年債に投資するのは躊躇されないだろうか。結果的に、劣後債の仕組みを利用して利回りを高く見せているだけであるとも考えられる。期限前償還を前提にする投資の危険性に加えて、その年限設定すら業種によっては、より慎重に判断すべきであることを肝に銘じるべきだろう。