国内起債市場を斬る 起債評価:12/9~12/13

金利の先高感があまり強くない中で、年末に急いで起債する動きはない。6日の金曜日は劣後債を中心として巨額の債券募集を見ることができたが、週を通しては静かな展開であった。大量の債券供給があった直後であることから、投資家の需要は必ずしも強くなく、投資に際しての銘柄吟味も辛めである。引続き、問題なく消化される起債の条件としては、利回りの高さと、発行頻度の多くないことである。もっとも格付けが低い場合には、レアだからと言って必ずしも良好に売れるとは限らないし、また、逆に、50億円程度の小額起債であると、売れ行きを云々する必要性が乏しい。日本の社債市場でセカンダリーマーケットの流動性の無さが問題視される背景には、投資家がバイアンドホールドであることに加えて、発行金額が小さいことも指摘される。そもそも、ほとんどの社債の最低取引単位が1億円であるために、総額50億円という社債は、50単位にしか分割できないのである。日本で社債を主たる投資対象とする投資信託が商品として成り立ち難いのも、こうした商品特性に原因の一つを求めることができる。市場の活性化を考えるならば、社債のあり方そのもとと、セカンダリーマーケットの将来像を見直す必要があるだろう。

足元の社債市場では、引続き、二極化の傾向が見られる。一つの方向性としては、年限の超長期化である。前週に大量に募集された期限前償還条項を付した劣後債もその文脈で考えられるし、より顕著なのが、鉄道会社に代表される安定業種による起債の多さであろう。この週も、三井不動産が10年4か月債と20年債を計500億円募集し、九州電力は30年債150億円、京阪ホールディングスは20年債を100億円、JR東日本は20年債100億円・30年債100億円・40年債150億円の計350億円を募集している。格付けで信用力を測定可能な年限を越えた社債については、業種特性や当該企業の置かれている状況等を個別に検討して投資判断を行うしかなく、監督官庁による介入度合いの強い業種の方が安定感が強くなる。電力・ガスや鉄道といった業種や、その他の業種では上位企業でないと安心して超長期年限の投資はできないだろう。それでも、将来に向けたリスクエクスポージャーの拡大であり、投資家の担当者も異動や退職によって、投資判断の責任を免れることになるのだから、投資判断における組織ガバナンスが強く求められるべきであろう。

もう一つの方向性がレア銘柄である。募集されたSUBARUの5年債100億円・7年債150億円・10年債150億円の計400億円は、第1回~第3回債である。昭和リースの5年債100億円は第4回債、荒川化学の5年債50億円も第4回債、日本化薬の3年債40億円と5年債80億円は第3回債及び第4回債と、極めて若い回号である。格付けもA-格~A格あたりで、必ずしも高格付けではない。発行年限も5年債が主である。これらの起債も発行体の裾野拡大には意味がある一方で、小額の起債であることから必ずしも市場の厚みには繋がらない。極論すれば、募集したらそれで終わりに近く、流通市場で二度と見かけることがない可能性が高い。

年内の起債市場は、もう少し動きがあるようだ。あまり芳しくない日銀短観の一方で、日経平均株価は高値を付けている。バブル経済のピークを象徴する日経平均株価の最高値は1989年12月末であったことも、忘れてはならない。