国内起債市場を斬る 起債評価:11/30~12/4

週初めの月曜日は前日までの準備が出来ないために、社債等の募集が行われることは稀である。これは、引受証券の事情でもあるし、投資家の状況も同様かもしれない。週末に海外を中心に市場環境が大きく変化したらと考えると、休日の前にすべてを固めてしまう訳には行かない。そのため、前週は実質的に12月市場と考えるしかない。しかも、実際には、週の後半に債券の募集が集中する。もし募残が多く出るようであれば、条件決定以降に販売努力が必要なのかもしれないが、近年の低利回り環境下では、募残に対する懸念も少ないようだ。

週央での債券の募集は少ないが、目立つ起債も少なくない。この期間では、アイフルの1.5年債が注目されるだろう。同社による二度目の公募ハイイールド債の募集である。大手機関投資家の中でも、BBBに満たない格付けの社債を投資対象と公言しているのはGPIF(Government Pension Investment Fund;年金積立金管理運用独立行政法人)くらいのもので、他の公的年金は少なくとも国内ハイイールド債について積極的ではないようである。一方で、海外のハイイールド債等を投資対象としているのであるから、首尾一貫していないのかもしれないし、国内クレジットの恐ろしさから敬遠しているのかもしれない。国内クレジットの恐ろしさとは、突然のデフォルト発生に対する懸念ではなく、破綻した企業の債券を保有していたことに対するステークホルダーやメディアからの非難を敬遠するからであるという。海外企業の破綻だったら仕方ないと酌量される可能性が高いのに、国内企業の場合には、「破綻するような企業の社債を購入したのは、いかがなものか」と白い眼で見られかねない。こういった風潮が残る限り、日本でのハイイールド債市場の活性化は容易でない。

金曜日である4日は、ソーシャルボンド、サステイナビリティボンド、グリーンボンドと、SDGs関連債券が種々募集されているが、金額という意味では、JR東日本の4本立て起債が圧倒的である。近年、定例化している10年刻みで超長期まで満遍なく募集するパターンであるが、今回の募集は20年債から50年債と超長期年限に限ったものとなった。20年債200億円・30年債300億円・40年債250億円・50年債150億円と合計で900億円の募集である。年限を加重平均すると約34年となる。

このような超長期年限の社債を調達ができるのは、公益性の高い鉄道や電力ぐらいだろう。日本の鉄道は1872年の官営から半官半民、1906年の鉄道国有法による国有化推進から始まっており、100年を超える歴史がある。電力にしても、民間会社から戦時中の国家総動員法に基づく半官半民の統合を経て、1951年に地域会社に移管されたものである。こうした過去に国が管理した経験を有することが、超長期の信用力を担保する一つの要因となっている。もっとも、日本航空のように半官半民の社歴があったとしても破綻した事例は存在するため、単なる過去の経緯だけではなく、事業の内容や将来の可能性を十分に考慮する必要がある。例えば、ガソリン自動車の販売が禁止されるようになった時に、自動車製造業者や関係の部品メーカーは、どのようにして生き残るのだろうかといった命題は、産業や企業の移り変わりを経験するような長期間の与信を行う場合に、念頭に入れておく必要がある、と考えるべきであろう。