国内起債市場を斬る 起債評価:4/5~4/9

漸く本格的な2021年度の起債市場がはじまった。既に指摘したように、起債タイミングの頭を取るのは、電力・ノンバンクであり、その後に財投機関や鉄道が続いて、おもむろに銀行が動いてメーカーが出て来るというのが典型的なパターンのイメージだろう。この4月についても、まずは2日に中国電力が先走り、この週に入ってリコーリース、東北電力が週央までに社債を募集した後、8日の木曜に北陸電力、クレディセゾン、地方公共団体金融機構の募集があり、9日の金曜日に多くの案件が集中するという構図になった。金曜日に募集されたのは、関西電力、トヨタファイナンス、日本政策投資銀行・住宅金融支援機構、東日本旅客鉄道・九州旅客鉄道といった顔触れで、毎年のパターンの通りである。小売業に分類されるバローホールディングスが5年債を募集したのは、やや異質に映るところであった。

募集された債券種類と年限構成を概観しても、前年度からの起債市場の特徴に大きな変化は見られない。まず、日銀による社債買入れオペの対象となる3年債・5年債の募集が多い。リコーリースとトヨタファイナンスはこの2年限のみに絞った起債であるし、クレディセゾンは5年債と7年債を募集している。結局のところ、日銀の社債オペによって起債が容易になる恩恵を受けているのは、ノンバンクが最大なのかもしれない。

もう一つの特性としては、超長期年限を含めた起債である。地方公共団体金融機構が10年債・20年債・30年債という主力年限で3本立てを選択したのが典型であり、日本政策投資銀行は主幹事証券の異なるスポット分を含めると3年債・5年債・10年債・30年債・50年債という5本立て計1,000億円の構成である。一方で住宅金融支援機構は、5年債・10年債・15年債・20年債で計800億円とやや刻みが細かいイメージに映る。

更に、これらの上を行くのが東日本旅客鉄道で、3年債・5年債・10年債・20年債・30年債・40年債・50年債と最近の起債パターンで、日銀買入れゾーンから超長期まで幅広い年限を一度に募集している。一つの回号は最大450億円でも、総計で2,000億円になる。一つの発行体による起債でイールドカーブを描くことが可能になるのは、面白い起債であると言って良いだろう。

東日本旅客鉄道と対極にあるのが、九州旅客鉄道で10年のグリーンボンドを募集している。新年度に入ってもSDGs債の募集トレンドは継続するものと期待される。既に、神戸市のようにグリーンボンドやソーシャルボンドといったガイドラインに基づくESG債の厳密な枠組みを嫌って、広い意味でのサステナビリティに資する起債としてSDGs債を標榜する例が見られるようになっている(2021年3月8日、神戸市の起債は包括的なSDGsへの取り組みの一環で、ICMAの環境債や社債貢献債など特定のガイドラインには沿わない形で発行)。特定の債券だけ使途を絞ったとしても、責任財産限定特約でなく無担保やジェネラルモーゲージである以上お金に色がないため、特定のガイドラインを遵守しているかどうかは、第三者による十分な確認がなければ、発行体の恣意的な発表に任される可能性があることを考えると、神戸市のような考え方も首肯できるのではないか。