国内起債市場を斬る 起債評価:12/13~12/17

この前の週までで、ほとんどの社債等の募集は終わっているはずなのだが、ギリギリまで頑張る発行体がいてもおかしくはない。結果として、この週にまで募集を引き延ばした銘柄は、何らかの特徴を持った社債ばかりとなった。

まずは、劣後債で、しかも、金融関係持株会社の劣後債であって、期限前償還の確実性が高いと考えられるものである。一つは三井住友トラストホールディングスのいわゆるB3T2債と呼ばれる、バーゼルⅢ規制に対応しTierⅡにカウントされるタイプの劣後債200億円である。10年債であるが、5年経過時以降に期限前償還が可能になるため、実質的には5年債と考える投資家は少なくないだろう。当初5年の固定クーポンは0.4%であり、R&IでA格とJCRでA+格という格付水準から考えると、劣後プレミアムが乗っている分、利回りは高く見える。ただし、もう1週前に募集された格付けの低い5年債を見ると、R&IとJCRの双方で1ノッチ下の評価である楽天カード債のクーポンは0.62%であり、R&IでBBB+格であったGMOインターネットは0.77%クーポンであった。信用リスクを取るか劣後リスクを取るか、比較した二社の事業内容を考えると、三井住友トラストホールディングスの劣後リスクの方が、相対的に取り易いと感じる投資家も少なくないだろう。

もう一つの劣後債は、第一生命ホールディングスの永久劣後債800億円である。当初クーポンは0.9%で、10年経過以降に期限前償還が可能となる。JCRでA-格の10年債と考えれば、比較対象は月初に募集されたジャックスの0.45%クーポンくらいしかないが、ちょうど倍の利回りを付した形である。ノンバンクの10年債と保険持株会社の実質10年劣後債とでは、保険持株会社に対する投資の方が安全と考えられかねないが、株式を公開し海外の保険会社を積極的に買収している姿勢を見ると、全くの低リスクとも言えないのではなかろうか。

特徴のもう一つがSDGs債である。具体的には、日本碍子が7年グリーンボンド100億円を募集している。調達資金の使途は、”グリーンボンド・フレームワークの適格プロジェクト(電池関連、次世代パワー半導体関連、CCU/CCS及び水素/アンモニア関連、クリーンエネルギーの利活用関連、製造プロセスの省エネ化関連)に係る設備資金、研究開発資金および運転資金に充当する予定”としている。格付けはR&IのA+格と高い水準であり、クーポンは0.18%と低い。12月10日に募集されたR&IでA格を取得している名古屋鉄道の7年サステナビリティボンドが0.2%クーポンであったから、バランスが取れているようにも見えるが、鉄道事業の安定性を考えると、やや日本碍子の0.18%クーポンは物足りないかもしれない。