国内起債市場を斬る 起債評価:8/1~8/5

カレンダーが8月に変わったからと言って、起債市場の状況が大きく変わるというものではない。引続き、海外の金利は上昇傾向にあり、一部において景気の先行きに対する懸念の声は出はじめているが、まだ少なくともこの先数か月は好調を維持できそうである。一方で、日本に関しては円安が一段落し、真夏の酷暑の中で気分は夏休みモードとなっている。亜熱帯化している日本は、近年、夏にあちこちで水害が発生しており、今年は福井などの北陸や山形など北日本での被害が出ている。被災地域の早急な復興を願ってやまない。

こういった状況下においても、月初の長期国債入札が行われ、その後、政府保証債や地方債のプライシングが行われるという段取りは不変である。余程の金利変動や市場の機能不全がない限り、お役所仕事である公共債の条件決定から募集という流れが止まることはない。そのためもあって、8月第一週の起債市場では、公共セクターによる債券募集が目立つことになった。まずは、成田国際空港と新関西国際空港である。前者が厳密には社債と分類され、後者が財投機関債に分類されるという差はあるものの、東西の主要な国際空港運営会社であり、政府によるサポートは十分に期待できる。なお、両社が共通に取得している格付けは、R&IのAA格及びJCRのAA+格と、日本国債より1ノッチ下であることには留意しておく必要があろう。株式会社形態を採用していることもあり、必ずしも政府保証債と同等の信用力を有しているというまでの評価は出来ないという理由であろう。成田国際空港が、3年債170億円・5年債130億円・10年債87億円・17年債73億円の計460億円と年限・金額とも細かく設定している一方、新関西国際空港は5年債119億円及び10年債81億円の計200億円としている。新関西国際空港も回号で見ると、十分に端数の付いた募集金額であるが。なお、新関西国際空港はソーシャルボンドの認定を得ている。

これらの他に、横浜高速鉄道は10年債80億円を募集し、日本政策投資銀行は2年債100億円を募集している。みなとみらい線の保有会社である前者は、鉄道施設購入資金の返済ということで普通の社債になっているが、後者はサステナビリティボンドとしての認証を得ている。日本政策投資銀行はサステナビリティボンド・フレームワークを設定しており、適格プロジェクトに対する新規投融資やリファイナンス等で資金投入することが可能であるため、サステナビリティボンドを活用する余地は大きいだろう。

これらの公的セクター以外には、イオンモールが4本立ての社債を募集している。3年債30億円・5年債230億円・7年債60億円・10年債80億円と、総計では400億円の大きな金額であるが、年限も金額も細かく設定されている。上述の国際空港による債券募集と同様に、今後はこうした年限・金額を細かく設定することが主流になって行くのだろうか。