国内起債市場を斬る 起債評価:9/12~9/16

上期末の起債ラッシュシーズンは、尻切れトンボの感がたぶんにある。金利の先行きが不透明に感じられるため、発行体が積極的な起債への取り組みを取らなかったのと同様に、投資家側も投資を積極的に行う体制を取らなかったように思われる。欧米を中心とする利上げのトレンドに対し、日本の金利は日銀のイールドカーブコントロールによって変動そのものが抑制されている。超長期年限についてのみ日銀のコントロール範囲外で金利水準の上がっている中では、超長期年限での積極的な起債は難しい。この週の起債は、サムライ債やグローバル債等を除いた国内発行の社債等という意味では、JERAの3.5年債、中日本高速道路の5年債、USEN-NEXT HOLDINGSの5年債、群馬銀行の期限前償還条項付10年劣後債、国際協力機構の10年債及び20年債、地方公共団体金融機構の7年債だけに限られた。

USEN-NEXT HOLDINGSの5年債は、格付けがBBB(R&I)格ということもあって、クーポンは1.02%という高水準である。絶対水準を求める投資家にとっては、一つの基準をクリアしていると思えただろう。正式な社名としても、ホールディングスがカタカナ表記でないことは要注意である。歴史的には、社名に表れているように有線放送に端を発し、光ファイバー等のブロードバンドネットワークサービスや映像コンテンツの配信といった辺りが個人に関係するビジネスであり、それ以外に、店舗・施設などへの有線放送やPOSシステム、キャッシュレスシステムの支援・提供を行っている。ネット情報によると、2017年にU-NEXT、USENが経営統合、株式会社U-NEXT(初代法人)を株式会社USEN-NEXT HOLDINGSに商号変更し、傘下に14社の事業会社を置く企業体のようだ。文字どおりやや変動性の高いビジネスを営んでいることに加え、これまでに買収や分割を頻繁に行って来たため、初回債の購入に慎重となった投資家は少なくないだろう。

民間企業による社債発行という意味では、残るのはJERAである。東京電力と中部電力の火力発電事業を統合した発電会社であり、ガスの販売も手掛けるものの、基本的に直接家計が接することはほぼないだろう。東京電力管内であれば東京電力エナジーパートナー、中部電力管内であれば中部電力ミライズといった小売電気事業者が、ユーザーに対することになる。電気事業法附則に基づいた一般担保付社債を発行することは出来ないものの、信用力としては必ずしも低くはない。JERAの取得している格付けはR&IのA+格とJCRのAA-格であり、東京電力ホールディングスが取得しているR&IのA-格とJCRのA格より2ノッチずつ高く、中部電力が取得しているR&IのA+格とJCRのAA格よりJCRで1ノッチ低い水準である。

JERAは1週間前にも22年債53億円及び24年債53億円と年限も金額も半端な起債をしているが、今週の起債は募集額こそ200億円とまとまっているものの年限は3.5年債であった。いずれも引受証券の単独案件であり、起債運営としては、投資家及び引受証券に無理を強いていた東日本大震災以前の東京電力には似ておらず、むしろ年限等の唐突さが中部電力に近いように感じられるところがある。