国内起債市場を斬る 起債評価:10/3~10/7

10月に入るや否や、下期の起債がはじまった。新しい四半期に入ってまず動くのが、電力、公的機関、金融関連というのが定番であるが、この10月の冒頭はどうだっただろうか。

まず、電力による起債は、想像された通り多くなった。北陸電力が3年債・10年債・20年債の3本立てで口火を切ると、沖縄電力が3年債と7年債の2本立てで続いている。その後も、東北電力が8年債と20年債の2本立て、関西電力が3年債と10年債の2本立てと複数本立ての募集が見られたが、四国電力は10年物のグリーンボンド単独を募集している。これらの電力債の募集総額は、1,105億円に上る。なお、北陸電力の20年債が51億円で、東北電力の同じく20年債が59億円と、超長期年限の起債が端数になっていることは注目しておきたい。10年以内は比較的まるまった金額で募集し易いが、超長期年限については投資家のニーズに合わせた金額に絞って募集額を決めているということであろう。万一募残が生じた場合に、超長期年限の大きな金利変動が生じると債券先物でのヘッジが十分に機能しないため、引受証券が慎重的なスタンスになっているものと推測が可能である。なお、電力に近い業態としては、これらの他に、北海道ガスが20年債100億円を募集している。

公的機関に関しては、阪神高速道路が5年物ソーシャルボンド350億円、日本政策投資銀行が3年債300億円・5年債200億円・10年債250億円の3本立て、西日本高速道路が2年債400億円及び5年債800億円のソーシャルボンド2本立て、地方公共団体金融機構が30年債200億円と募集が続いている。更に、筑波大学が社会的価値創造債としてサステナビリティボンド200億円を初めて公募債の募集を行っている。公的セクターは組織特性からソーシャルボンド等を募集し易い発行体であることも、債券発行を促進する効果があるものと思われる。

金融関連の起債としては、銀行やノンバンクの動きがなく、損害保険ジャパンが久しぶりに5年債と10年債各500億円を募集しているのみである。残存している円建て社債が劣後債のみであり、今回が第1回及び第2回債の普通社債となっている。

結果的に、これらの三つのセクター意外で目立ったのが、鉄道関連である。近年は複数本立てでの起債が目立つ業態であるが、この週は、JR東海が35年物のグリーンボンド80億円を募集した他、JR東日本は3年債150億円・10年債100億円・30年債100億円・50年債100億円を募集している。JR東日本の募集は、最近の複数本立てで良く見られたような年限設定であるが、やや募集した金額の少ないことが目立っている。