国内起債市場を斬る 起債評価:10/24~10/28

決算発表の時期は、自然と民間企業による社債等の募集は少なくなる。また、一般的に公共セクターの債券募集は月央までが多いため、月末の近づくこの週も財投機関債では住宅金融支援機構の貸付担保債券しか募集されていない。結果的に、あまり特徴のない民間の起債がパラパラと見られた。しかも、小口案件が多くなっている。三井住友信託銀行が5年債200億円と10年債80億円の計280億円を募集したのが最大であり、他は数十億円程度の案件がほとんどである。また、三井住友信託銀行の10年債を除くと、募集されたのは3年から5年の中期債ばかりであった。

敢えて特徴でグルーピングすると、一つが前述の三井住友信託銀行を含む金融関連の起債である。銀行セクターでは、他にオリックス銀行の3年債60億円が募集されており、ノンバンクでイオンフィナンシャルサービスが3年債及び5年債各50億円と、みずほリース4年債122億円という端数金額の募集が見られる。中期の小額起債という括りから少し外れているのが、このグループであるが、金額も年限も決して大きく逸脱しているものではない。

もう一つのグルーピングが、SDGs債であり読者はお馴染みのものである。既に触れたオリックス銀行の3年債はサステナビリティボンドの認定を取得している。金融機関の場合、融資先の資金使途を対象に含めることが可能なため、認定される範囲が広くなる。このサステナビリティボンドも、グリーンとソーシャルの両方のプロジェクトを対象とするということで、サステナビリティボンドとしての認証を得ている。また、森永乳業の3年債50億円はグリーンボンドとして募集されている。資金使途は、農場の糞尿処理発電やエネルギー効率改善、軽量容器製造機器用の設備投資などとされている。

そして、新しいSDGs債という触れ込みになると思われるのがマルハニチロの募集したブルーボンドである。今回のブルーボンドは、グリーンボンド原則に基づいて募集されたものであり、まったく目新しいものとは言い難い。既に海外ではアジア開発銀行等の認定したブルーボンドの募集事例がある。東証への上場企業で業種分類で水産業に区分されるのは、マルハニチロか極洋、日本水産くらいしかなく、ブルーボンド自体の拡大可能性は決して大きくない。かつてJICAがジェンダーボンドと目新しいラベルを貼って起債したこともあるが、あくまでもソーシャルボンドの一種という位置づけであり、闇雲にラベルの種類を増やすことは市場参加者を迷わせる。話題作りには良いのだろうが、投資家はきちんと債券の内容を理解して投資することが重要である。ブルーボンドだからではなく、あくまでもR&IがBBB+格と評価した5年債である。資金使途が、環境持続型の漁業や養殖漁業などとされている典型的なブルーボンドであった。