国内起債市場を斬る 起債評価:11/28~12/2

起債市場は、前週は勤労感謝の祝日があったために盛り上がらなかったが、この週は火曜日から社債等の募集がはじまり、金曜日には一大起債ラッシュとなっている。また、11月末を挟むという時期もあって、個人投資家向けの社債条件の決定も少なくない。東急の5年サステナビリティボンド100億円、ソフトバンクグループの7年債3,850億円、北海道電力の3年債100億円、北陸電力の4年債100億円、四国電力の3年債125億円、楽天カードの5年債500億円と5,000億円に近い額の条件が決定されている。ボーナスシーズンに特有の現象とも見えるが、顔触れを見ると電力会社に加わったのが、ソフトバンクグループと楽天カードといった、未だにネット社会を象徴する2社であり、この2社だけで4,000億円を越える金額となっている。しかし、楽天カードの5年債はまだしも、持株会社であるソフトバンクグループの7年債のリスクを個人投資家は的確に認識しているだろうか。事業会社だけでなくファンド等への出資も多く、必ずしも投資先に関する十分な情報開示がされている状態にはない。個人投資家が携帯電話会社と誤解している可能性は少ないと心配するのは筆者だけではないであろう。7年債で2.84%という高いクーポンが付されている背景を、販売する証券会社は購入希望者に正確に伝える義務がある。

起債ラッシュの中では、メーカーによる起債も少なくない。DM三井精糖ホールディングスの3年債100億円や雪印メグミルクの5年グリーンボンド50億円、森永製菓の5年サステナビリティボンド90億円のように小規模のものもあるが、アステラス製薬の3年債300億円及び5年債200億円の計500億円、旭化成の3年債100億円・5年債200億円・10年債200億円の計500億円、ソニーグループの3年債800億円及び5年債700億円の計1,500億円といった大型の起債も見られている。起債シーズンの後半をメーカーによる大型起債が飾るのも、よく見られる光景である。

既に触れた起債以外にも、SDGs債の募集は少なくない。東急は個人向けのサステナビリティボンドに加えて、機関投資家向けには10年のサステナビリティリンクボンド100億円を募集しており、資生堂も5年サステナビリティボンド200億円を募集している。西部ガスホールディングスの5年債100億円及び10年債50億円はトランジションボンドである。最近は単純なグリーンボンドがレアになりつつある。より多く見られたのが、公的セクターによるSDGs債の募集である。新関西国際空港の2年債100億円・20年債60億円・30年債70億円はソーシャルボンドで、西日本高速道路の2年債366億円及び5年債700億円もソーシャルボンド、都市再生機構の20年債130億円及び40年債50億円もソーシャルボンドと公的セクターの特性に相応しいソーシャルボンドが多い。それらに加えて、水資源機構の3年債70億円はサステナビリティボンドとされている。同機構の果たす役割や機能を考えると、それも違和感はない。