国内起債市場を斬る 起債評価:1/16~1/20

この週の起債市場が、日銀の金融政策決定会合の行方を気にする展開となったのは、やむを得ない状況だろう。前月の決定会合では金融政策の変更はないと予想されていたのに、サプライズで長期金利の変動幅拡大という結果であった。確かに10年金利のピンポイントでの抑制はイールドカーブの歪みを招いており、海外勢の売りに対する日銀の無限購入という図式で面白おかしく報じられてきた。一方、債券市場以外に目を向けると、大幅な円安が影を潜めむしろ円高方向に動いてきたため、為替相場の水準を意識した政策変更の動きでもないように見えた。そのため、この週に予定された1月の金融政策決定会合で、続いての政策修正が行われるかと注目が集まったのである。黒田総裁の任期が4月頭までとは言っても、両副総裁の任期が3月中旬までであり、2月に入ると国会に正副総裁の承認人事が付議されることは確実視されており、黒田総裁が後継を強く意識しないで済む最後の金融政策決定会合であったためでもある。ところが、共通担保オペの拡充を除いて、金利や債券関連の政策修正は行われず、結果として、株価は上昇し金利は下落して安定するという展開になった。それでなくとも、週前半の社債等の募集が少ないこともあって、金曜日に大型起債の条件決定が集中したのが目立つ展開になった。

金曜日に個人向けも含めて条件決定された大型案件は、三井住友フィナンシャルグループのTLAC債が2回号で1,053億円、三菱UFJフィナンシャルグループの個人投資家向け劣後債が2回号で2,000億円とメガバンク持株会社の二つが大きく、また、それらに加えて、日産自動車が3回号の社債で2,000億円を条件決定している。この3つの発行体だけで総額計5千億円を越える。ただし、個人投資家向けが3,400億円と過半を占めているのが、特徴でもある。なお、個人投資家向けの社債はいずれも週明けからの申込みで、投資単位は100万円となっている。かつて三菱UFJフィナンシャルグループの劣後債は250万円といった刻みも見られたが、幾ら富裕層向けの社債と言っても、100万円単位で複数単位購入してもらえば、所詮電子的な記録にすぎないのだから、100万円単位で良いのである。もっと小額でも構わないだろう。

日産自動車の社債計3本は、いずれもサステナビリティ債となっている。ガソリン燃焼自動車が依然売上でも利益でも過半を占めているのではあるが、グリーン化に向けての取り組みを支援するファイナンスとして評価して良いだろう。個人投資家向け社債は3年債で1.015%と高水準のクーポンであり、機関投資家向けの3年債500億円も同じクーポンと設定されている。R&IのA格という評価を考えると、国債対比+1%とされるスプレッドも決して高過ぎるという水準ではない。わずかに100億円のみ募集された5年債は、国債対比+125bpsで1.454%クーポンと、最近の20年債辺りでようやく見かけるようになった高利回り債になっている。同社の格付けや自動車産業に対する風当たりなどを考えると、より長い年限での与信は躊躇されるが、3年や5年という予見できる範囲の中期年限であれば、利回りが乗っていたら購入して良いと考えられるのではないか。しかしながら、個人投資家向けの3年債が1,400億円と巨額なのに、機関投資家向けが3年債と5年債を合わせても600億円しか募集されないという金額の割り振りには、ややきな臭いものを感じる。今後、同社に関する悪材料が公表されなければ良いのであるが。