国内起債市場を斬る 起債評価:4/24~5/2

GW前後の期間は、同時に一部の企業にとって3月末決算の発表シーズンでもある。そのため、なかなか社債等の募集に踏み込むことは難しい。しかも、今年は4月末に植田新総裁就任後初めてとなる日銀の金融政策決定会合(4月27-28日)が予定されていたため、金融政策の変更(「政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とした政策金利についての緩和バイアスを削除したのは、やや意外との意見があるが・・・)はないと見込まれていても、何らかのコメント発表等によって市場が動く可能性があり、社債等の募集タイミングを見出し難いカレンダーとなっていたのである。とりあえず事態が落ち着くのを見守ろうという姿勢が、多くの市場参加者にとって共通のものとなったものと考えられる。

4月最終週に向かって、少ないながらも幾つかの社債等の募集は確認されている。日本製紙の第16回債は、3年物の0.39%クーポンで300億円が募集されている。JCRのA-格という信用格付けの水準もあって、0.39%クーポンは3年債としては高利回りと言って良いだろう。日銀による社債オペに当てることも可能であることから、所謂、無難な起債となった。

次に、三菱地所は5年債と10年債各300億円のサステナビリティリンクボンドを募集している。別途に取り入れたサステナビリティリンクローンも含めたプロゲラム全体のSPTsとしてはSPT1「2025年度に再生可能エネルギー由来の電力比率100%を達成」やSPT2-1「2030年度にスコープ1、2 の合計を70%以上かつスコープ3を50%以上削減(基準年度2019年度)」、SPT2-2「2050年にネットゼロ達成」、SPT3「2050年度に女性管理職比率40%を達成」といった複数の目標を提示しているが、サステナビリティリンクボンドとしては、5年債に適用されるのがSPT1のみで、10年債に適用されるのがSPT2-1と限定されている。不動産会社としては、十分に取り組める目標と考えられるが、SPT2-2やSPT3の参照期間が2050年もしくは2050年度と遠い未来を指定していることが、実現性や規範性の観点から疑問視されよう。かなり遠い将来の約束は、絵空事に過ぎないと見られても反論できない。取組んでいるという美名を得ようとする「似非ESG」プログラムであると批判されよう。

その他に、コスモエネルギーホールディングスが5年債150億円を募集した他、住友不動産は5年3か月債400億円を募集している。5年債と呼称しても必ずしも大きな問題はないが、スプレッドプライシングのために国債の償還月と合わせたものではないので、純粋な5年債でないことを明示することは重要である。この第112回債はグリーンボンドの認定を取得しており、資金使途は「住友不動産麻布十番ビルの新規開発投資に係る調達資金のリファイナンス資金に充当する」とされている。三菱地所のサステナビリティリンクボンドよりは真摯な起債に思えるが、リンクボンドではないためSPTsは設定されず、未達時に財団等に寄付を行うといったスキームは採用されていない。リンクボンドでSPTs未達時に寄付を行うというのは、世界的に見ると一般的なスキームではなく、今後も色々な試行錯誤が行われることになろう。