国内起債市場を斬る 起債評価:10/3~10/7

10月に入っても、すぐに起債市場が全開とはならない。長期国債の入札状況を見て、市場の環境を判断するだけでなく。9月21日に発表された日本銀行による長短金利操作付き量的・質的金融緩和の市場での受容状態を確認し、更には、3日に公表された日銀短観に表れている企業の景況感も考慮しなければならない。こうした様々な要素を考慮に入れて、更に、投資家の購入意欲を見極めなければならない。年限、利回りといった重要な要素は、発行体によって異なる。投資家が購入可能と考える年限なのか、利回りは投資家の目線に適うものなのか。安定的な企業なら、低金利水準での超長期調達も馴染むだろうが、労働人口が偏在化する大企業過渡期に、将来的な安定業種の行方は、神のみぞ知るというところだ。そんな環境下で、過去の業績の変動が激しい企業は、年限を短くして利回りの水準を抑えることを考えるべきだろう。不適切に長い年限を設定するならば、どんなに高利回りでも募残が残る可能性がある。現に、9月に募集されたソフトバンクグループの劣後債は、機関投資家から予定されたレベルの強いニーズは集まらなかったのである。

下半期の起債市場の案件は、静かに始まった。地方債を除く社債・財投機関債等の募集がはじまったのは6日の木曜であり、上期と同様に金曜日に募集の集中が著しい。募集された案件を見ると、下期入りということで、まず目立つのが、公的セクターである。代表的なのが、高速道路会社の社債である。財政投融資計画に基づかないために法律上は社債と言うことになるのだが、実質的には財投機関債発行団体である日本高速道路保有・債務返済機構の重畳的債務引受条項が付されているため、日本高速道路保有・債務返済機構の債務とみなすことが可能なのである。阪神高速道路の3年債250億円と首都高速道路の5年債400億円が募集されている。

公益セクターでは、中部電力が6年債と20年債各100億円に、東邦ガスが30年債100億円と名古屋銘柄が登場している。中部電力20年債も東邦ガス30年債も国債対比+30bpsのスプレッドとされている。超長期国債利回りの居所がようやく固まりつつある状況であり、投資家の希望する利回り水準次第では、スプレッドよりも利回りが優先される展開となる可能性が考えられる。

日銀がイールドカーブを固定しようとしている中での、下期で注目されるのは高格付社債の利回りである。引続き、新発時点でのマイナス利回りは確認されていないが、日産フィナンシャルサービスの3年債は、0.001%クーポンのパー発行となっている。格付けはR&IのA+格であり、同業で格付けがより高いトヨタファイナンスも3年債の募集を予定しており、ついにマイナス利回りの募集が成立する可能性が出ている。日銀買入れ等によって歪んだマーケットの産物であるが、その資金が経済成長に繋がるのなら許容されるだろう。

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