国内起債市場を斬る 起債評価:11/21~11/25

11月中旬に再開された起債市場の特徴は、上期以来続くマイナス金利政策下での超長期年限の募集と、ややレア銘柄の登場である。

超長期の起債としては、東京ガスが20年債と40年債の二本立て、大和ハウス工業が20年債、京浜急行電鉄が20年債といった募集が見られている。大和ハウス工業は、当初6年債及び10年債との三本立てで募集の準備を行っていたが、利回り水準の変化を受けて20年債のみとした模様である。東京ガスの40年債は1.011%クーポンと、珍しい1%超えのため、投資家のニーズを集めた。電力に続き、都市ガス供給の小売自由化も来年4月よりはじまる予定であるが、電力とは異なって配送管敷設のインフラが大きく、発送電分離と同様な導管分離も2022年に予定されているが、電力小売の自由かも新規参入業者が期待したほどの動きは見られず、ましてや都市ガスの場合には、影響は小さいものと考えられる。そもそも、東京ガスに対するムーディーズの格付けは、Aa3格と日本国債よりも上位なのである。投資家のニーズが集まるのも当然だろう。

レア銘柄という範疇では、ホテルや物流等不動産関連の事業が主体となっているユニゾホールディングスが、5年債・7年債・10年債の三本立てで各100億円を募集している。JCRのBBB+格という評価もあって、消化は難航した模様である。2008年当時の不動産関連企業での社債デフォルト頻発を考えると、JCRの格付け姿勢に関しては、どうしても消極的にならざるを得ない投資家も少なくないだろう。特に、東京オリンピックを前に加熱感・割高感の出ている不動産については、慎重に考える投資家が増えているのではないか。各100億円の募集であったが、業種と格付けとで難易度が高く、更に、国債利回りの上昇によって、投資妙味が減退したという形か。

もう一つのレア銘柄に入るのが、大和証券グループ本社の7年債だろうか。劣後債とかの細工もなくストレートな普通社債である。200億円程度と言われていた募集額が220億円に増額されており、投資家のニーズが集まったことを指し示している。しかし、社債募集の直前に、単独引受の大和証券のクレジットアナリストが、野村證券と大和証券の格付け比較をレポートしているのには、何とも笑いを禁じ得なかった。銀行系から独立している証券会社は世界的に見ても稀な存在になりつつあり、国内旧大手三社のうち二社で比較するしかないのは事実であるが、三井住友銀行との提携・合弁から解消に至った過程で法人取引の弱体化は否定できず、大きく打ち出したアジア戦略も奏効している様には見えない。果たして7年後の大和証券、証券業界はどのような姿になっているのだろうか。

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