国内起債市場を斬る 新春特別号:2017年の起債市場を予測する

昨年11月の米大統領選での予想外のトランプ候補の勝利を受けて、ドル高・株高・金利高の展開で年末を迎えた。やや状況の反転といった展開であったが、今月20日の正式の大統領就任、その後の一般教書演説等を見ないと、政策の実現性を含めて判断は出来ず、更なる日本円の金利上昇は期待しない方が良いだろう。特に、長期から超長期を中心に円金利は上昇しているが、国債利回りの上昇ほどは社債等の利回りは上昇していない。つまり、国債対比スプレッドはマイナス金利下で、従来よりも大きく拡大していた物が、国債利回りの上昇を受けて、ややスプレッドがマイナス金利下よりも縮小する形となったものと考えることができる。結局のところ、ボラティリティへの意識が高まっているために、国債利回りがプラスであった時代のスプレッドにまでタイトニングするとは考えがたいが、金利上昇はスプレッド縮小という形に帰結する可能性が高い。

もっとも、金利が上昇し10年国債利回りがプラスになったとはいえ、2016年1月末にマイナス金利政策が宣言される以前の水準にまでは戻っていないのである。引続き、超長期の利回りが確保できるゾーンが一つの主戦場になるものと考えられる。発行体も投資家も、これまでの国債利回りの上昇を大幅とは見ていないために、スプレッドや利回りの絶対水準の目線が同程度にあるならば、条件決定に至る案件は多くなるだろう。もっとも米国の景気回復が力強く、米金利の上昇が続くようであれば、日銀が日本の金利を低位安定に保つのは難しくなるだろう。それでも、本年度中は超長期の起債市場を脅かすような状況にはならないだろう。

中期以内の年限については、日銀の金融緩和が強力に働いており、引続き、3年の日銀オペ見合い以外には、スプレッドもクーポンの絶対水準も投資妙味を欠く展開となる可能性が高い。新顔やレア物に対する投資家のニーズは強い受胎を継続すると考えられるが、フリークエントイシュアーにとっては、中期年限は扱い難いものとなるだろう。また、格付けがあまり高くない発行体にとっては、調達の絶好の機会を提供し続けるだろう。ただし、調達した資金の投資先に見込みがあるのならばであるが。

2017年の新規の発行体としては、計画通りに東京電力パワーグリッドが社債募集を行えるかどうかが注目を集めるだろう。国による強力なサポートは期待できるが、柏崎刈羽原発の再稼動が遅れており、引続き、ヘッドラインリスクは高い。一方で、デフォルト方向に向かいつつある発行体も散見されている。同様にヘッドラインを注視しつつ、懸念ある発行体へのエクスポージャーを抑制的にするといった取組みが必要である。

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