国内起債市場を斬る 起債評価:1/16~1/20

前週に比べると、少し発行体のバリエーションが出てきた。四半期の初めと言うタイミングであり、相変わらず財投機関債等の公共債や電力債が目に付くが、それ以外の顔の債券募集も散見される。また、劣後債では、個人投資家向けの起債もあるし、四半期頭の銀行の債券募集が金額を嵩上げしている。劣後債という形式で、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社などのグループ保険会社を有する保険持株会社)は、期限前償還条項付30年債を500億円個人投資家向けに条件決定している。最小単位が100万円なので、一部の個人投資家向け銀行劣後債より小口でも購入が可能となっている。10年経過後に償還が可能となっており、それまでの固定クーポンは1.18%である。コールのかかる前提で10年債として投資するならば、A+(JCR)の格付け対比では、劣後プレミアムが乗っていると見て良い。機関投資家で欲しがるところもありそうだ。

三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の永久劣後債も、同様に10年経過後に償還可能であり、それまでのクーポンは1.39%となっている。JCRの格付けはA-格で、MS&ADインシュアランスグループホールディングスよりも低いことが、クーポンに反映されている。期限前償還条項が付されているものの、永久債という設え(しつらえ)が投資家を躊躇させるところである。しかし、投資家のニーズは旺盛であったようで、発行額は1,000億円から1,500億円に増額されている。

こうした劣後債プレミアムでの高利回り債に比して、中期で同等の1%越えクーポンを叩き出したのが、光通信の7年債280億円である。クーポンは1.5%で、二つの劣後債をも上回り、しかも償還期限は手前にある。同時に募集された0.9%クーポンの5年債120億円とともに、格付けはBBB+(R&I)格及びA-(JCR)格とされている。この発行体の過去の行状を考え、また、現在のビジネス展開を考えで、積極的な投資を躊躇する投資家も少なくないはずだが、利回りを求める投資家は根強く、人気となった模様である。両回号とも野村證券の単独引受で販売されており、5年債の引受手数料55銭、7年債の手数料1円は、同年限の他社債に比べて美味しい水準である。計400億円の引受で、同社の販売力を生かしてきちんと収益を狙ったのであろう。

その他にも、超長期債で利回りを確保したい投資家向けに募集されたのが、九州電力20年債0.92%クーポン100億円、相鉄ホールディングスの15年債0.7%クーポン150億円、日本高速道路保有・債務返済機構の40年債1.194%クーポン150億円及び1.104%クーポン450億円、東京地下鉄の30年債0.975%クーポン100億円といった超長期の起債である。劣後プレミアム、信用リスクプレミアム、年限と利回りの引上げに利用される要素は様々であるが、投資家の利回り追求欲が旺盛であることを物語っている。

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