国内起債市場を斬る 起債評価:3/6~3/10

今年度の起債シーズンもラストスパートに向かっている。この次の13日からはじまる週が物理的、時間的に限界になる。既に情報ベンダーによる年度のベストディールの投票も締切が近付いており、3月の中旬ともなり、年度末を感じさせる状態である。前週に東京電力パワーグリド、味の素といった大型起債があり、ソフトバンクも個人投資家向けを合わせて4,500億円も条件決定しているので、この週の案件はどうしても小粒に見えてしまう。それもそのはずで、北海道ガスの7年債50億円、西部ガスの10年債50億円、山陽電気鉄道の10年債60億円といった小型案件が複数募集されたのである。日本政策金融公庫も4年債を計100億円募集しているが、中小企業者向け融資・証券化保証業務用の第58回債10億円と、中小企業者向け証券化支援買取業務用の第59回債90億円に分割したために、一層、小粒感が強くなっている。

10年物国債の利回りがプラス圏に安定しており、国債対比のスプレッドプライシングが復活しつつある。もっとも信用力の高い地方公共団体金融機構で国債対比+15bpsの0.23%クーポンであるから、プラスになっているとは言え国債利回りの低さは顕著である。他の銘柄を見ても、R&IのA格及びJCRのA+格である日本精工で国債対比+33bps、各々1ノッチ格付けが高R&IのA+格及びJCRのAA-格である西部ガスで国債対比+29bpsといったプライシングである。日銀による10年金利の誘導水準が0%程度であるために、社債市場に歪みが生じていると言って良いだろう。

超長期15年で起債したのが、西武ホールディングスである。歴史的には、2004年に西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載事件を受けて、西武鉄道が上場廃止となった後、ようやく2014年に持株会社化した西武ホールディングスが上場に漕ぎ付けたものである。現在の事業内容としては、西武鉄道、プリンスホテル等である。その他に、豊島園や横浜八景島シーパラダイスの運営、埼玉西武ライオンズの球団保有等依然として幅広い業務運営を行っている。鉄道関連ではバス事業もあるし、宅地開発等不動産事業も営んでいる。過去の事件さえなければ、普通の民間鉄道事業主体のグループ会社として良いだろう。今回の起債は、15年債100億円であったが、国債対比+36bpsのスプレッドでプライシングされている。取得した格付けはJCRのA-格で、第1回債でいきなり超長期債の募集というのは、鉄道事業者という位置付けであるためとしか考えようがない。基本的には、池袋・新宿と所沢・秩父方面を結ぶ巨大な鉄道会社であり、経営地盤としては強固な物を有している。格付けはあまり高いとはいえないが、15年の調達には違和感は小さいだろう。

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