国内起債市場を斬る 年度初め特別号:2017年度の起債市場

いよいよ新年度である。例年を考えると、10年長期国債の入札を越えて、財投機関債や電力債の募集で、新年度の起債シーズンが幕を開けることになるだろう。日本銀行による強力な金融緩和によって金利が低水準にコントロールされている中で、国債+αの利回りを得られる一般債に対するニーズが底流にある。特に、一般債は国債と異なって大きくマイナス利回りになることはないので、条件設定を誤らなければ順調に消化されることが期待される。

2017年度も起債環境は2016年度と大きく異ならない。日本銀行による長期金利の誘導水準見直しが噂されることもあるが、物価上昇の期待が安定的な2%水準に達していない中での見直しは容易でないだろう。したがって、イールドカーブコントロールの導入された昨年9月以降のイメージを念頭に置くのが良いだろう。そうなると、起債の軸になるのは、中期と超長期の年限になるだろう。

中期の起債では、特に3年債への注目が強い。日本銀行の社債買入オペをにらんだ3年債の起債は、格付けが高い場合には0.001%クーポンで募集されることが少なくない。国債利回りがマイナスに沈んでいる年限であり、国債対比のスプレッドは大きく拡大したままである。しかも、残存3年以内の社債は日銀による買入対象になるから、投資家も極めて低いリスクで売却益の獲得を図ることができるのである。日本銀行が国債を全年限購入している中で、社債に限ってだけ残存3年という区分を設けていることから、社債市場全体に歪みを生んでおり、誰が見てもクレジット市場への肯定的な効果が見られなくなっている。今こそ、社債の買入れオペを撤廃することが望ましいのではないだろうか。

超長期の年限では、2016年度も募集金額の拡大が見られている。しかしながら、超長期で15年とか20年の与信に適した業種・発行体は限られる。歴史的には、電力、ガス、鉄道といった業種が超長期債の主力である。共通するのは、料金設定に政府等が関与していることで、長期的に安定的な収益構造が確保される業種ということである。一方、2016年の起債市場では、以前から時に超長期債を募集していた不動産や商社に加えて、メーカーの一部による超長期債の募集が確認されている。業容の安定した業界上位の企業ならともかく、中堅レベルの企業に関して、投資家が超長期の与信を判断していくのはイチかバチかに近い。また、製薬のようにR&D(research and development)で大きく業績が振れ、健康関連でヘッドラインリスクが高い業種は、保有債券を時価評価する投資家には不適切な投資対象となる可能性が高い。

2017年度の起債はどのような展開になるか。間もなく具体的な募集がはじまることだろう。

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