国内起債市場を斬る 起債評価:4/3~4/7

新年度の起債市場は、10年長期国債の入札を経て、地方債の条件決定からはじまり、7日の金曜日には、複数の財投機関債及び事業債が募集されている。ようやく2017年度の起債がスタートしたのである。当面、金利上昇は懸念されず、慌てて起債するという展開にならないと思われるが、東芝等のクレジット市場に影響を与える企業イベントがありそうで、業種や格付けによっては、より慎重な取組みが求められることになろう。

前年度の起債で目立ったのが3年債と超長期債であったが、7日に募集されたの中でも、これらは多く見られた。3年債を募集したのが、日本政策投資銀行とJR東海である。いずれも0.001%クーポンであった。特に、JR東海の3年債は日銀の買入れオペ対象見合いであり、強いニーズが確認された。超長期債を募集したのが、中部電力と北海道電力、西日本鉄道の20年債、電源開発の15年債といった顔触れである。地方債でも、千葉県・横浜市・川崎市が20年債をこの週に条件決定している。10年長期国債の入札の影響を直接受けるのは10年債であり、20年の地方債はむしろ20日に予定されている20年超長期国債の入札の後に募集すれば、市場実勢をより的確に把握できると思われるのだが、公募地方債の募集は概ね月央までに終わらせるのが常である。しかし、現在の日銀による管理相場では、国債入札と切り離しても、発行条件が投資家心理に与える問題は小さいと思われるのは、皮肉にもならない。

この週の起債を業種別に見ると、鉄道、電力の二業種に絞られる。今後の起債観測では、メーカーやノンバンクも上がっているのだが、口開けは公益セクターとなっている。しかし、社債の売行きという意味では、両者は大きな差となった。順調に消化されたのは、jR東海3年債と西日本鉄道15年債の鉄道会社であり、一方の電力は大苦戦である。電力では、超長期債以外に、中部電力が5年債、北海道電力が10年債を募集している。これらのうち、問題なく消化されたのは、北海道電力の10年債くらいで、残りは苦戦している。特に大変だったのは、超長期債である。国債対比のスプレッドで見ても、中部電力で+23bps、電源開発で+24bps、北海道電力で+33bpsと厚めの水準になっていたが、いずれもクーポンが1%を下回ったことに加えて、セカンダリーの実勢から乖離していたことで、苦戦する結果になった模様である。もっとも、年間での利息収入を考えると、早めの時点でクーポンの大きな債券を購入することが重要であり、金利の先高感がないことを確認した投資家は着実に買いを入れて来るだろう。各社シンジケーションも、短期的な売行きをあまり懸念する向きはない。

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