国内起債市場を斬る 起債評価:6/26~6/30

引き続き、3月期決算企業の株主総会シーズンである。そのため、社債の募集はあまり見られない。唯一募集されたのは、イオンモールの3年債150億円・6年債150億円・10年債200億円の計500億円であった。イオンモールは、イオングループのショッピングセンター等開発業者である。イオングループと同様に2月期決算を採用しているために、このタイミングでの社債募集が可能になっている。業種特性に合わせ小売等で3月期決算と異なるタイミングの決算を選択する例はかつて多かったものの、その後、多くの企業が3月期決算や12月期決算に移行してしまい、2月末決算の企業は珍しくなってしまっている。

イオンモールの社債は、募集タイミングが良かったこともあり、どの年限も順調に消化された模様である。9月や3月の下旬は投資家側も動きにくいのであるが、6月下旬の社債募集閑散期は発行体側の要因であるから、3月期決算を使用していない企業は、こういうタイミングをもっと活用していくべきであろう。3年債の人気は、多分に日銀オペによって支えられている虚構の需要であるが、レアな6年債は置くとしても、10年債は国債利回りがプラス圏に安定しており、利回りの絶対水準の観点からも投資妙味を得られる可能性が高い。イオンモールの10年債のクーポンは0.6%であり、前週に募集された国債対比+4.5bpsのスプレッドで条件決定された国際協力機構の20年物財投機関債0.602%クーポンとほぼ同水準の利回りである。不動産という業種特性、中でも地方の人口減少を見据える中でのイオンモールの位置付けは難しいが、10年という年限設定はギリギリの投資可能範囲であろう。

こうした募集案件が見られる中で、タカタが民事再生手続きの申請を行っている。3本計300億円が発行されていた同社の社債は、デフォルトとなった。いずれも社債管理者不設置債であり、個別の社債権者は自らが債権の届出を行う必要がある。既に、同社については、数年前から法的破綻はともかく、何らかの債務処理は必至と考えられており、任意の事業再生手続きの場合には、社債権者に影響が及ばない可能性があったものの、法的破綻処理の場合には影響を免れないために、一般的な多くの機関投資家はタカタ債を保有していなかったものと考えられる。既に格付けは2015年には、BB+格といわゆる投資適格を下回る状況となっていたのである。

日本の破綻企業はギリギリまで破綻を回避しようと努力するために、弁済率は高くないとされる。タカタの場合にも、自動車メーカーが立て替えている巨額のリコール負担を考えると、社債の弁済率が高くなるとは思えない。幸いなことに、既に破綻が懸念されていたタカタ債のデフォルトは、周辺のクレジット投資に悪影響を及ぼしていないようである。従って、過度のリスク回避に向かうべきではない。十分な分析に基づく投資判断を購入時に、保有中も定期的及びヘッドライン発生時に、必ず行うことが肝要である。

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