国内起債市場を斬る 起債評価:7/17~7/21

7月の起債ラッシュは、あっという間に終わってしまった。前週の14日金曜日に、12発行体21本という大量の募集が行われたものの、21日の金曜日は3発行体11本である。一週間を通じて見ても、地方公共団体金融機構のFLIP債が木曜と金曜で計18本あるので、本数は大きくなるが、この7月のFLIP債はほとんどが30億円の募集で、F375回の9年債が100億円とF380回の5年債が80億円と大きくなっているだけである。つまり、18本で計660億円の募集に過ぎない。前週にみずほフィナンシャルグループの募集した永久劣後債のように、2回号で計4,600億円といった巨額の募集は見られなかったのである。

募集金額がまとまっていたのは、日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債が2本で計600億円である。募集されたのはいずれも40年債であるが、一つは通常の満期一括償還債350億円であるが、もう一つは利息を満期償還時に一括して支払うタイプのもの250億円である。これが割引発行であれば理解は容易かもしれないが、元本はパーである。償還時に元本より大きな金額が返って来ると変換して考えるのも良いだろう。保有期間中の収益は未収収益として計上することになるのが、アキュムレーションを適用する割引債とは処理が異なる。日本高速道路保有・債務返済機構はかつてディープディスカント債を発行したこともあり、それとは会計上の取扱いが異なることになることに留意が必要だろう。

事業債は、パラパラといった感じであった。募集された年限はやや長いといった感じである。住友商事の10年債100億円は良いとしても、クレディセゾンの10年債100億円はノンバンクのビジネスモデルを考えると、やや長過ぎる設定である。ただ、いずれも消化は苦戦した様である。近鉄グループホールディングスは、7年債100億円と15年債100億円を募集している。鉄道会社のビジネスモデルから考えると違和感のある年限ではないが、同社の格付けはR&IのBBB格及びJCRのBBB+格である。やや格付け対比では年限が長過ぎるだろう。ところが、年限が長いために利回りが高くなるので、投資家の需要が集まるというのは皮肉な構図である。なお、7年債は200億円が個人投資家向けに条件決定されており、機関投資家向けと同じ0.37%クーポンとなっている。

金曜日には、DCMホールディングスの7年債100億円と、日本碍子の15年債も100億円で募集されている。いずれも順調に消化されてはいるが、前者の格付けがR&IのBBB+格であり、後者が同じR&IのA+格であることを考えると、やや年限は長い。日銀による物価水準の引上げが成功するとは到底思えないが、原油価格の高騰や政府財政の悪化に夜悪い金利上昇などのシナリオを考えると、金利の上昇を頭の片隅に置いておくべきであり、不当に長い年限の債券に対する投資は抑制的に臨んでおいた方が良さそうである。

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