国内起債市場を斬る 起債評価:7/31~8/4

暑い夏が来た。関東は梅雨明け以降、必ずしも晴天ばかりではなく、むしろ曇り空が多いようである。かんかん照りではないものの、蒸し暑さは夏真っ盛りで、客先まで外歩きをすると、汗があっという間に滲み出てくる。起債市場は鈍い展開が続いている。金利も株価もあまり動かず、米国の利上げペースも上がらないとなれば、今の時期に動くよりも、少なくとも今月下旬から来月前半、場合によっては、下期入りしてからでも遅くはないという判断が出来るのだろう。

8月の頭というタイミングでは、動きが鈍いのもやむを得ないのかもしれない。投資家も引受証券も、発行体も気分は夏休みに片足を突っ込んでいるかもしれない。この期間に募集されたのは、月初めの地方債や財投機関債を除くと、民間の社債という範疇では、光通信の10年債と野村ホールディングスの5年債・7年債・10年債のみである。国際協力銀行の3年債及び5年債は、株式会社の発行する社債であるが、財政投融資計画に基づいて募集される財投機関債でもある。

これだけ募集される債券が少ないと、基本的には売行き良好である。中でも、最も良く売れたのが光通信の10年債400億円である。格付けがBBB+(R&I)格及びA-(JCR)格と必ずしも高いとは言えず、また、業種の面からも、10年という年限が適切であるとは言い難い。近年、光通信は野村證券の主幹事で時々公募普通社差異の募集を行っているが、歴史的には、ITバブルの時代に積極的に公募普通社債を募集して資金を調達し、業績が悪化した時点で積極的に市場から時価買入れを行って買入償却をしたことで知られる発行体である。結局、安価で社債を返すことが出来たのであるから発行体としてはメリットがあったのであるが、時価評価を強いられる投資家や買入れ償却に応じて売却損を計上した投資家からは、忘れられない発行体の一つとなっている。この発行スタイルは、かつて阪和興業が、外貨建て転換社債を発行して、ひそかによく行っていた手法で、発行後株価が下がれば、転換が進まない代わりに有利な買い入れ消却が実現できるという訳である。

現在の光通信はホールディングカンパニーとして、傘下の子会社で、法人向けOA機器販売、各種通信サービスの加入取次ぎ、法人向け移動体通信サービスの提供等や、個人向け携帯電話等通信サービスの代理店、更に、保険代理店といった事業を営んでいる。都内の中小企業向けには、「光〇〇サービスと申しまして・・・」というような如何にも関係会社顔して、「NTTの子会社ですが、電話料金の見直しをお手伝いしています・・・」のような飛び込みで詐欺まがいのセールスが未だに多いが、概要は堅実な事業展開を行っているようである。そういう意味では、10年という年限も違和感はないのだが、果たして10年という年限で安定しているのか。それとも、業績の劇的な好転が期待できるのか。そう思えなくても、10年債の1.78%クーポンという、国債では最長の40年債でも得られない利回りに、目を惹かれた投資家も少なくないのだろう。

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