国内起債市場を斬る 起債評価:8/21~8/25

8月下旬に入ると、起債市場は上期末を意識した動きなる。実質的に募集可能なタイミングが9月15日前後までとなるため、毎年8月下旬になると、それまでの旧盆休みを忘れたように市場が動きはじめる。先に金利低下期待があるなら異なる展開となるかもしれないが、残念ながら9月に入ると、米国の雇用統計からFOMCという利上げの流れが必至と見られるため、日本の金利もその影響を受けるのではという懸念が強い。もっとも、朝鮮半島の情勢次第では、急激に円高が進んで、その対応としての金融緩和強化というリスクシナリオも念頭に置いておかなければならない状況ではある。基本的には、上期末のタイミングを控えて波乱の生じないことを願う時間帯であるが、夏から秋にかけて市場が変動することは珍しくない。発行体としては、早めに必要な資金調達を済ませておきたいのだろう。

引続き、日銀によるイールドカーブコントロールが強力に効いているため、イールドカーブは10年までがフラットであり、その後、スティープな形状となっている。ただし、この1週間で見ると、徐々に長期から超長期の金利が低下傾向にあり、下限が見えているものの、慌てて起債する必要は強くないかもしれない。こうした状況での起債は、必然的に年限を分散するという選択肢を活用することになる。

もっとも基本的な年限構成としては、中期債と10年債の組合せだろう。この期間に、中期債と10年債の組合せで募集したのは、三井不動産、大和証券グループ本社、三菱重工業、三菱マテリアル、三越伊勢丹ホールディングス、東京電力パワーグリッドと6社に及ぶ。中期債を単独で募集したのが、日本電産、西日本高速道路、日立キャピタル、クレハの4社のみであった。中期年限は国債利回りがマイナス水準にあることから、スプレッドプライシングが機能せず、投資家との目線が合わせ難い。結果として、日本電産と三菱重工業の社債は消化に苦労したようである。

一方、10年債はスプレッドプライシングが機能するだけでなく、利回りの絶対水準が得られるために、販売状況が好調になる可能性は高い。10年債で消化が難航したのは、三菱重工業と単体で募集した九州電力の二つである。つまり、三菱重工業の起債は両年限とも、プライシングに失敗したのである。なお、ついに東京電力パワーグリッドは3回目の起債で、年限を10年にまで伸ばして来た。政府によるサポート期待の強さもあって今回も順調に消化したようであるが、果たして更に超長期まで年限を伸ばせるのか見物である。

超長期年限は、金利水準が安定しないこともあってプライシングが難しく、やや発行体から敬遠されている。投資家側からは絶対水準を確保できることもあって、根強いニーズがあるようだ。特に、JR西日本が募集した30年債は、クーポンが1.042%と1%を越えたことで強いニーズを集めたようである。その他に、超長期年限では、東京建物15年債や日本高速道路保有・債務返済機構30年債、地方公共団体金融機構のFLIP28年債が募集されている。

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