国内起債市場を斬る 起債評価:1/8~1/12

今年も新年の起債のスタートは、電鉄会社の個人向けからというパターンである。かつては、電力会社とその年の最初を競っていた記憶もあるが、東日本大震災以降は、電鉄会社の個人向けが初端というのが定着している。既に1月5日という年初第2営業日から、東武鉄道は個人向け3年債を条件決定しており、1月11日には小田急電鉄が同じ3年債で続いている。どちらも募集期間は1月30日までと設定されているが、12月までに出たボーナス狙いの起債と考えて良いだろう。預金金利がほとんどつかない中では、20%の利子源泉課税を考慮しても、3年物社債の利子は魅力的である。格付けがA(JCR)格の東武鉄道は0.16%で、AA-(JCR)格の小田急電鉄は0.11%で条件決定されている。地域住民にとっては馴染みの存在であり、事業の安定性を考えると投資妙味は高い。

それ以外の債券はまだ動きが鈍い。起債観測は色々と上がっているが、本格的な動きはこれからだろう。条件決定した銘柄としては、日本政策投資銀行の3本立て財投機関債、住宅金融支援機構の2本立て財投機関債に加えて、ようやく三菱UFJリースの2本立て社債が加わったというところである。やや日銀の金融政策の先行きに着いて懸念が高まり、10年金利が不安定になりつつある中であるが、二つの財投機関債は10年債がいずれも国債対比+18.5bpsのスプレッドで条件決定されている。同日に募集されており、クーポンも0.26%で揃っている。前年1月に募集された両発行体の10年債はいずれも国債対比+15bpsで条件決定されており、1年前に比べるとややスプレッドは開いている。もっとも12月に募集された住宅金融支援機構の10年債は国債対比+18bpsであり、年が変わって大きくスプレッドに変化があったとも見えない。

社債で唯一(日本政策投資銀行債は会社法上の社債であるが、財政投融資計画に基づく起債であるため、財投機関債と分類される)募集されたのが、三菱UFJリースの3年債及び10年債各100億円である。3年債は言うまでもなく日銀オペ見合いの起債であり、0.08%の条件で順調に消化されている。10年債は0.455%のクーポンとなっており、同日に募集された2本の財投機関債よりも、20bps近くスプレッドが厚い。同社の格付けはR&IのA+格及びJCRのAA-格である。政府サポートの考え方次第であるが、格付けだけを見ると厚いスプレッドと言って良いだろう。10年債も順調に消化された模様である。

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