国内起債市場を斬る 起債評価:3/12~3/16

どうやら今年末は、いつまでも社債の募集は終息しないようだ。16日が最後の募集日になるかと思われたが、この日に募集された社債の払込日は23日か26日であり、月内払い込みの「駆け込み起債」という意味では、まだ数日の余裕は残っている。20日に募集するという起債観測も上がっており、なかなか年度末とならない。既に某起債評価の年度内ノミネートは締切られており、これらの起債は対象外になってしまうものと思われる。

12日からはじまる週の債券募集はサムライ債等があり、16日の金曜日になって、社債の募集が行われる展開となった。しかも、野村総合研究所は、円建ての10年債と同時に、オーストラリアドル建ての5年債も募集している。短中期の募集は日産フィナンシャルサービスの3年債250億円及び5年債150億円、光通信の5年債といった顔触れが並んだ。長期債では、野村総合研究所の10年債200億円に住友倉庫の7年債50億円があった。そして、超長期債が、光通信の15年債400億円及び住友倉庫の20年債100億円である。

これらの中でもっとも売行きの良かったのが、光通信の15年債だっただろう。100億円程度の発行予定で募集が開始された後で、最終的には400億円の発行となったのである。そもそも光通信の格付けは、R&IのBBB+格及びJCRのA-格であり、過去の買入償却事件や業績の大幅な変動もあって、超長期の与信に耐えられる銘柄とは考え難い。それでも投資家の人気が集まったのは、1.79%という高いクーポンである。8日に募集された三菱地所の40年債のクーポンは1.313%であり、それよりも40bps以上高い利回りだったのである。三菱地所の40年債でさえ、不動産に対する40年の与信が懸念されるところであるが、光通信への15年の与信も決して安全とは思えない。投資家の尺度は、目先の絶対水準に惑わされて、「背に腹」の判断を下さざるを得ない状況に変わりつつあるのかもしれない。

その他の起債についても、総じて順調な販売状況であった。投資家も年度内の募集が残り少ないことを認識しており、資金消化と利回り確保とのバランスを考えざるを得ない。金利の先高感がない中では慎重に案件を見極めて行くしかないが、債券の保有期間というタイムホライズンを意識して発行体や業種を評価しないと、現状がいつまでも続くことはない。物価は、日銀が引上げようとしても上がっていないし、金利は日銀の強いコントロール下にある。これらの動きが変われば、物価が上がって、日銀が金利操作を放棄することも予想できる。それが、何年後に来るか誰も計ることはできないが、投資家の保有する債券の価値が激変することは、間違いないのである。

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