国内起債市場を斬る 起債評価:5/7~5/11

引続き、起債市場の動きは鈍い。1年前を振り返っても、ゴールデンウィーク明けの木曜と金曜になって、ようやく四国電力の10年債及び20年債、電源開発の10年債、地方公共団体金融機構の10年債、日本高速道路保有・債務返済機構の20年債、それに住宅金融支援機構の5年債及び10年債が募集されただけである。今年の場合も同じタイミングになって、前年と同じ顔触れが、四国電力の10年債及び20年債、地方公共団体金融機構の10年債、住宅金融支援機構の5年債及び10年債と揃っている。それら以外にも、住宅金融支援機構は30年債を募集し、森ビルの20年債に、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の10年債及び15年債が募集されている。

結局のところ、前年と同じ年限を募集した銘柄は、住宅金融支援機構の5年債を除くと、いずれも10年債か20年債であり、2018年のみに募集された銘柄も、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の10年債以外は、すべて超長期債であった。日本銀行執行部が新体制になっても、イールドカーブコントロールの継続が明示されている。そもそもオーバーシュート型コミットメントにおいても、2%の物価安定の目標が安定的に持続するまで、強力な金融緩和を継続することが示されており、金利が上がらないのであれば、利回り確保を超長期債で狙うのは妥当な投資である。金利上昇が確実視されるならば、デュレーションの大きな超長期債は、例えクーポンが高くても、価格変動性の高さから忌避されるだろう。超長期債が売れるのは、投資家が金利上昇リスクを強く感じていないことの表れと考える。

超長期債の抱えるリスクは、単にデュレーションの大きさから来る価格変動リスクのみではない。発行体の信用力が毀損される信用リスクも、償還までのエクスポージャーが長ければ、それだけ大きなものになる。倒産確率の推移からは、信用力の低い銘柄は早期に消滅するために、超長期のリスクが低いと考えられることもあるが、それが誤りであることは自明であろう。信用リスクに晒される期間は短い方が良いに決まっている。超長期債の信用リスクは、償還年限の長さと連動しないが、むしろエクスポージャーという意味で、期間概念を伴うのである。多くの投資家は単なる理屈からだけでなく、信用リスクの構造を本質的に理解しているために、無闇な超長期債投資を行わないのである。

この週に募集された超長期債のうち、財投機関債については信用リスクを懸念する必要性は決して大きくない。通中に業務遂行されているならば何らの問題もないし、仮に収支構造が悪化したとしても、公的サービスとして必要な業務であるならば、国からのサポートが期待できる。つまり、国と一体視できるかどうかなのである。民間企業の場合にも、業務の重要性や国からのサポートなどが、超長期債投資に際しての重要な要素となる。そういう意味では、電力会社は不動産会社に勝るだろう。それでも、同じ20年債で四国電力の0.738%クーポンと森ビルの0.97%クーポンを並べると、決して後者が割安とは思うべきではないのではないか。

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