国内起債市場を斬る 起債評価:6/4~6/8

起債ラッシュというムードは出てこない。条件決定された本数を見ても決して多くはない。しかし、条件決定された金額を単純に合計すると、1兆円を越えてしまう。週単位の条件決定額が1兆円を超えるのは、それだけで大型起債があったと連想する。この週に関しても大型の条件決定があった。しかし、1兆円を越える金額のうち、個人向け社債が約5千億円と半分近くを占めているのが特徴である。もっとも、機関投資家向けの募集は財投機関債などを含めて、6千億円以上あるのだから、起債ラッシュを感じるべきなのかもしれない。特に、8日金曜日の案件集中度合いは強い。

個人投資家向け社債の条件決定の中で、金額の小さいものから挙げると、四国電力の3年債125億円と九州電力の3年債150億円がある。いずれも0.14%クーポンであり、銀行預金が年限を問わず、ほとんど利息が付かない中では、個人投資家にとって投資妙味のある条件であろう。しかも、電力の小売自由化が実施されたとは言え、依然として、発電の大手は地域電力である。新規参入した発電業者も、小売に参入した売電業者も、決して大きなシェアとはなっていない(それでも、ガスの小売自由化に比べると、電力の小売は自由化が進んでいるのだが)。しかも、他の多くの個人投資家向け社債と異なって、10万円から投資できる。

700億円を条件決定したのが、みずほフィナンシャルグループである。劣後債の形態であり、シニア債より回収順位が劣るのであるが、個人はその差をほとんど意識していないだろう(言い換えると、目論見書を渡されるだけで、営業から回収順位の説明を口頭で受けるケースは稀なケースと想像する)。公的資金が投入された場合には、元本が削減されることも、あまり意識されない可能性が高い。5年後の期限前償還条項が付されており、それを前提に5年物で0.4%クーポンもあれば、かなり高い利回りに見える。みずほ銀行やみずほ証券等の持株会社であるが、その構造的劣後性を意識する投資家も少ないだろう。”Too big to fail”であると誰もが想像する発行体なのである。しかも時間軸は5年であると考えられている。もし金融庁が期限前償還の不実行を容認するような状況になったら、日本の金融秩序のみならず、資本市場全体が大いに混乱しているのだろう。まさに想定外の事態でしかない。なお、社債の販売単位金額は、100万円である。

最大の4,100億円を条件決定したのは、ソフトバンクグループである。機関投資家向けの400億円と同時に、個人投資家向けの6年債を条件決定している。機関投資家向けのクーポンは1.569%と刻んでいるが、個人投資家向けの社債は1.57%クーポンである。最低投資額は100万円である。格付けはJCRのA-格であり、機関投資家向けは国債対比+164bpsと格付け対比明らかに分厚いスプレッドが付されている。同社の事業内容やM&A等の経営活動、創業者リスク等を考慮したものであり、機関投資家は相変わらず慎重な姿勢を崩していないが、個人投資家は馴染んだ携帯電話キャリアということで、問題なく消化されることだろう。特に、個人投資家は保有社債の時価変動を考慮しなくて済むのが強い。

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