国内起債市場を斬る 起債評価:7/2~7/6

7月に入ると、起債市場の要素は一変する。株主総会の集中する時期を越えて、しかも、年度の第2四半期に入ったのである。四半期の頭というタイミングで、様々な業態の起債が動き出す。典型的な発行体としては、財投機関、電力、ノンバンク、銀行といったところであるが、7月の5日6日の二日間で、この業種が全て動いている。しかも、総合商社や鉄道も動いたのだから、なかなかの起債ラッシュ感が出ている。

電力で動いたのは、電源開発が10年債200億円及び20年債100億円、中国電力が5年債100億円及び10年債200億円、北陸電力が10年債200億円、九州電力が10年債200億円及び20年債100億円の計1,100億円となった。厳密な意味では電源開発債は電力債でないが、現在でも社債管理会社を設置している。10年債の国債対比スプレッドは九州電力以外が+32psで、九州電力が+35bps。20年債は電源開発が+21bpsで、九州電力が+24bpsであった。R&Iの格付けで九州電力のみがA格で1ノッチ低いことなどを、反映したものである。

ノンバンクでは、日立キャピタルが3年債250億円及び5年債と10年債が各100億円、三菱UFJリースが5年債200億円及び10年債100億円、NECキャピタルソリューションが5年債及び10年債各100億円と計950億円を募集している。格付けがR&IのA+格である日立キャピタルと三菱UFJリースの10年債は国債対比+32psと、電源開発や中国電力と同じスプレッド水準であった。NECキャピタルソリューションは、格付けがBBB+格と異なる水準であり、国債対比スプレッドは公表されていないが、クーポンは0.62%と、三菱UFJリースの10年債プラス27bpsあり、単純計算すると国債対比+59bpsということになる。なお、銀行では新生銀行が5年債100億円を募集している。

財投機関としては、日本政策投資銀行が3年債・5年債・10年債各200億円と20年債100億円の計700億円を募集しており、四半期の頭を強く意識させる動きとなっている。10年債の国債対比スプレッドは+16.5bpsと電力やノンバンクよりも、タイトな水準である。この他、20年債のみを募集したのが、三井物産と京浜急行電鉄の2社というのも、今後の起債市場の展開を占う動きであった。R&IでAA-格の三井物産は、A格の九州電力に比べて1bpワイドなスプレッドで募集されている。電力債の一般担保効果もあるが、JCRでA+格の京浜急行電鉄は国債対比+20bpsと更にタイトなスプレッドになっており、投資家が利回りの絶対水準を求める傾向と、業種によって超長期債投資に対する姿勢の異なることがわかる。

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