国内起債市場を斬る 起債評価:8/6~8/10

広島の原爆祈念日から旧盆休みに至るこの時期は、多くの起債は期待できない週である。それでも、前週に長期国債の入札が行われた後、公募地方債の条件決定が行われる期間であって、市場関係者も完全に休みとはならない時間帯である。週央からは財投機関債等公共セクターの募集が行われ、10日の金曜日には社債の募集が行われたのである。

募集された公共債は、定例の銘柄とそれ以外に分類できる。基本的に毎月募集されているのが、住宅金融支援機構と地方公共団体金融機構である。前者は、概ね5年債と10年債を中心に、それ以外の年限も月によって募集するといった形である。8月は、5年債・10年債に30年債を募集している。今年度のこれまでの実績を見ると、4月は5年債・10年債・20年債、5月は5年債・10年債・30年債、6月は5年債・10年債・15年債、7月は5年債・10年債・20年債といった履歴である。超長期の募集年限を月ごとに変えているというところか。一方、地方公共団体金融機構の場合は、10年債250億円のみを募集している。同機構は、FLIPに基づく起債を除くと、10年債を毎月募集し、それ以外に5年債・20年債・30年債が組み合わされることもあるという形になっている。

必ずしも毎月募集しない公共セクターで8月に債券を募集したのが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と都市再生機構である。前者は、基本的に2・5・8・11月と四半期に一回ほど複数年限の財投機関債を募集する発行体である。今回は、5年債・10年債・20年債の組み合わせで、計660億円とまとまった金額の募集となっている。また、後者も、四半期に一回2・6・8・11月に財投機関債を募集するのが過去のパターンであるが、今年度は発行予定額が増えたこともあって、5月に続いて40年債200億円を募集している。民営化がイメージされると、40年といった超長期の年限の与信は難しくなるが、足元では、復興支援等の観点から、かつて見られたような不要論は見られない。しかし、人口減少が進む中での都市再生機構の役割を考えると、事業内容の見直しは必須だろう。

社債を募集したのは、初ものの月島機械と森ビルである。いずれも10年債を募集しており、前者は50億円、後者は100億円と小額の募集である。一部の情報ベンダーでスプレッドの誤報も見られたが、単純な10年債同士なので、明らかであった。月島機械の格付けはBBB+(JCR)格であり、最初から10年債というのは、やや年限が長いか。一方で、森ビルは不動産業であり、ネガティブな見方も出来るが、人口減少の中での都心集約という意味では、都市再生機構よりも事業立地としては明るいかもしれない。それでも、もしもの時の公的支援は期待できないだろう。

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