国内起債市場を斬る 夏季特別号:格付け変更の明暗

アベノミクス効果もあり、近年の企業業績は概ね良好である。先月公表された日銀短観を見ても、大企業製造業の業況DIは21で、非製造業のDIは24とまずまずの数値となっている。バブル経済崩壊以降で業況判断DIのピークを見ると、製造業では2004年9月調査の26、非製造業では2006年12月調査から2007年6月調査の22となっている。つまり、大企業にとって現在の業況は、ほぼ陽の極に近い状態となっている。消費者の生活実感からはかなり乖離があるが、少なくとも大企業にとってネガティブに感じる要素は多くないようである。

こうした良好な業況にあると、企業に対する格付けの変更は概ね格上げが中心となり、格下げは個別事情のある企業に限られるということになる。今年度に入ってからの企業発行体格付け変更を、まず、R&Iによるアクションから見て行こう。格上げになった企業はキッコーマン(A+へ)、西松建設(A-へ)、戸田建設(A-へ)、安藤・間(A-へ)、東芝(BB+へ)、プレス工業(BBB+へ)、マツモトキヨシ(Aへ)、三菱自動車工業(BBBへ)、五洋建設(A-へ)、アルフレッサHD(A+へ)、メディパルHD(A+へ)、オリンパス(Aへ)、ソニー(Aへ)、雪印メグミルク(A-へ)、JXTGHD(A+へ)、昭和シェル石油(Aへ)と計16社見られた。東芝を除いて、いずれも1ノッチの格上げであった。こういった環境での格下げは、京都銀行(Aへ)の1社のみでこの事象が目立っている。金利低下の中で積極的な基盤拡大を図っているため、収益力の改善に時間を要するというのが格下げの理由である。地方銀行の経営環境の厳しさは、単に金融庁からの指摘だけに留まらず、様々な角度から浮き彫りにされているようである。

次に、JCRのアクションを見ると、三十三FG(2018年4月2日三重県を本拠とする三重銀行と第三銀行が統合、A-へ)・第三銀行(A-へ)、東京TYFG(2018年5月1日東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京3行が合併して「きらぼし銀行」としてスタート、A-へ)、東京都民銀行(A-へ)・八千代銀行(A-へ)・新銀行東京(A-へ)、リンテック(A+へ)、オカムラ(Aへ)、タカラトミー(BBBへ)、清水建設(AA-pへ)、大林組(AA-へ)、大成建設(AA-へ)、新生証券(A-へ)、昭和リース(A-へ)、新生銀行(A-へ)、IBJL東芝リース(A-へ)、興銀リース(A-へ)、セゾン自動車火災(AAへ)、長谷工コーポレーション(Aへ)、ロイヤルHD(BBB+へ)、フェローテックHD(BBB-へ)、森永製菓(Aへ)、ダイキン工業(AAへ)、中部飼料(A-へ)と数多く見られた。ただし、お気づきのとおり経営統合によるものも少なくない。一方で格下げは、三十三FG設立による経営統合の影響で三重銀行(A-へ)がその憂き目に遭った。

実際に格上げの件数が圧倒的に多いことが確認されたが、業種としては建設関連が目立っており、これも足元の経済実態を反映しているように思える。R&Iによる京都銀行の格下げに端的に現れているように、また、JCRの格付けでも地銀の再編による変更が見られており、地域金融機関の経営の厳しさは顕著であり、今後もこれにつづくアクションが見られる可能性を秘めている。

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