国内起債市場を斬る 起債評価:8/27~8/31

上期末の起債ラッシュがはじまっている。特に、週後半の集中度合いは、なかなかのものである。金額面では、野村ホールディングスのTLAC債が1,000億円を募集しているが、本数ではノンバンクや電力、陸運が稼いでいる。

中でも、陸運は、鉄道中心であるが、やや長めの年限で多く募集されている。日立物流はレア物でありながら、7年債・10年債・20年債と各100億円を募集した。日立製作所という元々の親会社(現在の出資比率約3割)を盛っている強みに加え、佐川急便の持株会社であるSGホールディングスからも約3割の出資を受けており、また、福山通運とも提携していることで、決して日立グループ依存ではない。鉄道以外の陸運業で20年債というのは珍しい年限だが、事業基盤の強さが評価されたものと考えられる。

日立物流以外の陸運は、いずれも鉄道で、京成電鉄の10年債及び20年債各100億円、西日本鉄道が10年債100億円を募集しており、安定した業種特性が年限に強く反映されている。両社とも格付けはJCRのA+格であり、揃って募集した10年債は国債対比スプレッド+29bpsとクーポン0.395%で同じ水準になっている。

電力では、中国電力が10年債及び19年債各100億円と関西電力が5年債と10年債各300億円を募集している。東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故、原子力発電所の運転停止といった一連のイベントの影響を受けた電力会社に対するネガティブな評価は、徐々に薄らいで来ており、起債額が大きくなり、年限も超長期債の募集が可能になってきている。それでも、中国電力と関西電力の格付けは、R&IではA+格で横並びであるが、JCRではAA格とAA-格で1ノッチ差があり、10年債のクーポン及び国債対比スプレッドは7bpsほど関西電力が高くなっている。これは関西電力の原発依存度が高いことを反映したと考えられるが、募集金額の大きさも影響している可能性がある。

この週の社債募集は、割と業種で年限が揃っているように見える。業種によって、適切と考えられる調達年限が変わるためもあるが、本来的には既存債務の償還スケジュールなどから調達年限が異なる可能性も少なくない。この種に社債を募集したノンバンクはリコーリースとJA三井リースで、どちらもリース会社であり、募集年限は、3年債と5年債各100億円と同じであった。格付けが、リコーリースがAA-(JCR)格と高く、JA三井リースはA-(R&I)格及びA(JCR)格と2ノッチ低い評価であるが、3年債は同じ0.05%クーポンで募集され、5年債のクーポンは0.19%と0.2%で1bpしか差は付いていない。3年債は日本銀行による社債買い入れオペの対象となることが期待されており、そのために格付けの差がクーポンに反映されなかったと考えられる。これも強力な異次元の金融緩和によって生じた市場の副作用と見ることができよう。

コメントは受け付けていません。