国内起債市場を斬る 起債評価:11/12~11/16

ようやくこの週の後半になって、起債市場が大きく動きはじめている。電力債から募集がはじまった(厳密には、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債が先行している)のは、従来からの典型的なパターンと言って良いだろう。この週に動いたのは、他に道路関係の公的セクターは当然としても、いきなりメーカーの持株会社であるJFEホールディングスと通信業であるKDDIが社債を募集したのは、珍しい展開かもしれない。どちらも決してフリークエントイシュアーではないのである。

JFEホールディングスが募集したのは5年債100億円であり、決して過大な規模でもないし、基本的には安定した年限である。同日に募集された東日本高速道路の5年債0.07%クーポンやKDDIの5年債0.11%クーポンと比較すると、0.15%クーポンはやや高い水準である。しかし、R&Iの格付けを見ると、東日本高速道路がAA+格で、KDDIがAA-格、JFEホールディグスがA格と大きく異なる。必ずしも割安には見えない投資家も多かったことだろう。

KDDIは5年債400億円、7年債300億円、10年債200億円の計900億円とまとまった社債を募集している。かつてのような国際電信電話会社ではなく、携帯電話も含めた通信事業者である。今後5Gのネットワーク展開が必要であり、MVNOとの競合等決して安定した事業基盤にないのではないか。その時に、果たして7年債や10年債といった年限は適切だろうか。ソフトバンクグループのように、M&Aや巨額の投資で本業の収支が脅かされるといった懸念は少ないものの、NTTを含めた3社の競合関係は今後とも続くだろうし、事業展開の華やかさを相対的に欠くKDDIの将来像をきちんと理解しておかないと、今回の社債に投資するのは難しいはずである。

それでも、今週で売れ残ったのが、九州電力の10年債だろう。同時に募集された20年債は0.883%クーポンと高水準で100億円の募集であったために消化できたものの、10年債200億円は市場で持て余されたようである。そもそも今回設定された国債対比+34bpsというスプレッドの水準が、この夏以降の電力債の売行き難航を無視したものであった。横並び意識の強い業態において、過去の起債と同程度か、わずかにスプレッドを拡大した程度では、消化に苦戦し募残が生じた前例を踏襲するに過ぎない。結果的に、10年の電力債は消化の悪循環に陥ってしまっているのである。特に、収支構造の悪い電力会社が、このトラップから逃れるためには、よほどの経営判断が必要だろう。

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