国内起債市場を斬る 起債評価:10/15~10/19

引続き、債券の募集は「金曜日集中起債」だが、本数のみに着目すると、地方公共団体金融機構がFLIPに基づく債券を、この週だけで計17本が募集されている。年限は5年から40年と幅が広い。もっとも一般的な市場公募年限とあまり重ならないように配慮されており、7年債・8年債・9年債がそのうち11本と過半を占める。それ以外の年限も端数の年限が多いものの、40年債を2本計180億円募集したことには注目しておきたい。FLIPで募集された債券はあまり市場で出回らないと期待されるが、店頭売買参考統計値を発表されているものもあり、この週でも1本130億円(5年債)、150億円(40年債)や200億円(9年債)については、十分にセカンダリーでの出合があることも想定される。

 

公共セクターを除くと募集金額の大きな社債は、電通であろう。5年債が350億円、7年債が200億円、10年債が250億円の合計800億円を募集している。R&Iの格付けはAA-格と高い水準であるが、過労死問題で社員の行動規範である“鬼十則(第5則、6則を抜粋。取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...。周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。)”が大々的に批難される等、ESG投資の観点からは問題があるとされかねない発行体である。一方で、東京五輪に向けてますますビジネスは活況であり、経営努力の熱意と事業の安定性については、疑問の余地は少ない。実際に、電通の社員に接すると、バイタリティに溢れているだけでなく、創造性も豊かであり、日本のトップ企業の一角を占めるのも違和感がない。10年債の国債対比スプレッドは+28bpsであったが、同日に募集された他の社債のいずれよりも、タイトな水準であった。

 

この週で売れなかった社債の代表がヒューリックの10年債である。1957年に富士銀行傘下で設立された不動産会社であるが、現在の社名になったのが2007年であり、新興不動産会社のイメージも強い。格付けはJCRのA+格であり、10年国債対比+35bpsの0.494%クーポンで200億円が募集された。格付会社の違いを無視すると、電通の1ノッチ下の格付けであるが、不動産という業種プレミアムが足りないとも考えられる。結果的に、募残があったようで、やはりスプレッド不足と募集額の大きさが、その原因と考えられる。8月に募集された森ビルや東急不動産ホールディングスなど、不動産の10年債が消化に苦戦している例が続いている。果たして近々に募集される予定の三井不動産の10年債は、大手の威厳を見せて順調に消化されるだろうか。

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