国内起債市場を斬る 起債評価:10/29~11/2

10月の最終週ともなると、起債市場の動きはほとんど見られない。一つには、9月末決算の発表という季節要因があるだろう。また、同時に、株式市場が不安定化しており、日々大きく値が動いているために、社債投資の目線が動き易い。本来的には、株価と社債の信用力との間には、高い相関はないはずである。しかも、発行体の企業価値の変動を示す株価と、元利金の期日通りの支払を考慮する信用力は、本来別物であるという者が多い。そもそも、社債に関して投資家は受身になりがちであり、元利金の受け取り可能性が低下しない限り、発行体の状態には無頓着でも構わないのである。ところが、株式市場においては、企業価値の変動に影響する様々な情報が反映されており、市場の効率性についての議論余地はあるものの、少なくとも信用力以上にビビッドな動きを示す指標性を有している。そのため、社債投資を行う上で、株価の動向を注視する価値がある。KMVモデルに代表されるように、株価と信用力を強く結び付ける考え方もあるが、日本の市場動向を見る限り、株価との関係は緩やかな相関傾向という程度であろう。株価には真実でない物も含めて様々な情報が織り込まれており、株価が大きく変動している場合には、社債への投資についても慎重にならざるを得ないという判断となる可能性が高い。そういった意味でも、社債募集が消極姿勢に変わるのも、この環境下無理もないのではなかろうか。

 

唯一事業債では、オリックスが5年債200億円と10年債100億円を募集している。いわゆるノンバンクと分類されるオリックスであるが、もちろんプロ野球球団を保有しているだけでなく、この週にも公表されたようにグループ傘下の不動産会社である大京を完全子会社化する等、同社の事業範囲は広い。リースを起点として、ノンバンクに近い銀行や生保・運用といった金融関連事業に拡大し、更には、今夏問題となった関西国際空港の運営を請け負ってもいる。既に単なるリース会社の粋を超えている。ただし、個人向けのビジネスは大きくなく、知名度は必ずしも高くない。レンタカー等直接個人向けのものもあり、大阪には劇場や文化館を保有しているが、首都圏ではやや弱いイメージがある。もっとも京セラドーム大阪は、90%がオリックス不動産の所有であり、オリックスバッファローズの本拠地として知られる。プロ野球の球団保有がグループ企業の信用力を示すものではないが、投資する際のサポート材料にはなるだろう。財務体質の脆弱な企業は球団保有が認められない。ちなみに現在の格付けは、R&IのA+格であり、かつてのような信用不安からは程遠い状況にある。

 

株価の変動が大きくなる一方、米国の利上げは淡々と遂行されており、日本の長期金利水準についても、上昇懸念が少なくない。日銀の強力な金融緩和の枠組みが容易に崩れるとは思えないが、海外の金利上昇から懸念される円安の進行可能性を考えると、日銀によるイールドカーブコントロールのレンジが上方にシフトされる見方も強い。金利が上昇に向かう懸念が高まれば、発行体による起債の駆け込みが起きるかもしれない。当面、海外金利と為替の状況には留意しておきたい。

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