国内起債市場を斬る 起債評価:11/19~11/22

週央から起債が数本ずつ見られたが、結局、勤労感謝の日前の22日に案件募集が集中している。時系列で見ると、火曜日は2社2本で、水曜日は2社1機構の計5本と増え、木曜日は14社計23本と一挙に跳ね上がった。幾ら条件決定前に、スプレッドやクーポンの絶対水準で購入者と握ってあるとしても、最終的な手続きが必要であり、案件の集中は売り手の証券会社にとっても、買い手の投資家にとっても、好ましいことではないという事情は、言うまでもない。

現在の日本の起債市場において、条件決定を行い、事務主幹事を務めるトップレフトの証券会社は、ほぼ5社に限定される。かつての起債会のような統制組織ではなく、自然発生的に旧大手四大証券と銀行系証券の大手が取り仕切る市場になっているのである。SMBC日興証券は、旧四大証券の一角であるが、銀行資本の傘下にあり、当該銀行の親密な準大手証券を吸収しており、みずほ証券や三菱UFJ証券といった銀行系の直系証券を中心に親密な準大手証券等を統合したものと、類似の形態である。この22日のトップレフトの分散を見ると、野村6本、大和3本、SMBC日興7本、三菱UFJ5本、みずほ2本という状況である。その他の準大手証券は、主幹事団の一角を占めることはあっても、全般を取り仕切ることは稀である。

これら現在の五大証券は、事務的な管理能力、投資家向けの販売ネットワーク、更には、発行体とのリレーションといった各面で、圧倒的な力を持っている。しかし、案件が集中した際に、どこまでキメ細やかな対応ができるだろうか。また、情報ベンダーの起債情報担当者も、案件の集中に悩まされている。あまりに募集が一日に集中するので、十分な分析記事も書けないし、取材も疎かになりかねない。市場参加者の様々な声を集めて報道する情報ベンダーが情報収集に苦戦するようでは、健全な市場の発展を阻害されかねない。結局のところ、起債の条件決定が集中すると、誰にとっても良いことはないのである。よほど条件決定に自信の持てない発行体や主幹事証券が、人の目を憚り(はばかり)、こっそり募集しようとしていると勘繰られても仕方ないではないか。

休日を含まない5営業日ある週で、休み明けの月曜日に募集が難しいのは仕方ないだろう。しかし、火曜日や木曜に国債の入札があることは、必ずしも社債等の条件決定や募集に影響しない。起債市場で安定した運営が行われるためには、月曜日を除く残りの4営業日である程度分散して条件決定が行われるべきであろう。近年の各週最終営業日に募集が集中することは、この国内資本市場にとって決して良くない慣習なのである。

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