国内起債市場を斬る 起債評価:1/7~1/11

2019年の債券募集がはじまった。しかし、マーケットは荒れ模様、世界中の株価が安定せず、国内金利も10年国債利回りがマイナスになったりするので、決して良好な起債環境とは言えない。日本銀行によるイールドカーブコントロールは、短期金利がマイナス0.1%に固定され、10年国債利回りがマイナス0.2~プラス0.2%のレンジに設定されている。結果として、年限がより長くなるに連れて、金利変動幅が大きい。逆に言えば、短い年限の金利水準はあまり動く余地がないということである。市場が落ち着かない状況にある場合には、長期債よりも中期債の方が募集しやすい。

結局のところ、市場が安定しない中では、投資家は公的セクターや中短期債を好みがちになる。しかも、10年長期国債の入札後であるから、地方債からはじまる公共セクターの起債が行われるのには絶好なタイミングである。そうした好機を窺って出てきたのが、日本政策投資銀行の三本立てである。募集されたのは、3年債・5年債・10年債の各200億円である。3年債は0.001%クーポンで単価が100円00.1銭である。5年債は0.03%クーポンで、10年債は0.195%クーポンである。前年10月に募集した際と3年債及び5年債のクーポンは変わっていないが、10年債のクーポンは0.309%から大きく低下している。なお、10年債の国債対比のスプレッドは、+15.5bpsから+17.5bpsと金利低下を反映して拡大している。

中短期債の募集に適しているという環境は、ボーナスシーズンの後というリテール投資家の状況と相俟って、個人向け社債の条件決定が複数行われている。もっとも毎年1月に個人向け社債を募集するというのは、東武鉄道と小田急電鉄の定例である。両社とも前年に続いていずれも3年債を条件決定しているが、東武鉄道は0.16%クーポンから0.15%クーポンに低下し、小田急電鉄は0.11%クーポンから0.1%クーポンへといずれも1bpの水準低下が見られる。金利の低下傾向は中短期債にも波及しているということなのである。

なお、11日の金曜日にはクレディセゾンも個人向け10年債の条件も決定している。東武鉄道や小田急電鉄の3年債とは異なる年限であり、クーポンは0.48%と高水準である。しかも、両鉄道会社の個人向け社債が100万円単位で募集されるのに対し、クレディセゾン債は10万円から投資可能である。ノンバンクの10年債は投資対象の年限としては、悩ましいところである。みずほフィナンシャルグループともっとも親密な関係であったが、近年はやや位置付けに変化もあるようだ。10年の与信をどう考えるか、キャッシュレス社会到来への対応格差を含め、思いとどまりたいところではないか。

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