国内起債市場を斬る 起債評価:1/15~1/18

1月の起債ラッシュは、18日の金曜日に起こった。水曜日以降、少しずつ募集が行われ、中には森ビルの劣後債500億円という大型の募集もあったが、金曜日の案件集中度は高い。週全体も含めて業種別の傾向としては、財投機関債等の公的セクターが引っ張り、ノンバンクと鉄道が花を添え、その他の社債が色々と出て来たというところだろうか。中でも、案件の集中した金曜日は、鉄道関連だけを見ても、東京急行電鉄2本立て計200億円、東京地下鉄3本立て計300億円、相鉄ホールディングスと京阪ホールディングスが各100億円と、全部合わせると、7本も募集されたのである。しかも、いずれもが10年債以上の年限の長い債券であった。それに加えて、成田国際空港が3本立て計200億円、東日本高速道路が500億円、日本高速道路保有・債務返済機構が100億円と、運輸関連の起債が少なくなかった。

運輸やノンバンク以外で注目を集めた一つが、村田製作所による3年債400億円と5年債600億円の計1,000億円の募集である。初回の公募社債募集ということもある上に、格付けがAA(R&I)格と高水準なのも巨額の起債をサポートしている。5年債のクーポンは0.15%で、同日に募集された他の5年債と比べると、成田国際空港の0.05%や東日本高速道路の0.07%、オリエンタルランドの0.12%を上回り、セブン銀行の0.16%を少し下回る水準である。セブン銀行も格付けは同じR&IのAA格であるが、5年債の募集金額は村田製作所の600億円の3分の1の200億円でしかない。村田製作所は近年TVCM(雑学系と分解系というCM)も打っていることもあるが、基本は電子部品メーカーであって最終消費財のメーカーではない。そのことが逆に、業績が安定し易いとされることに繋がり、企業の強みに感じられるのかもしれない。

なお、この週に起債見送りを公表されたのが、トヨタファイナンスとオリエントコーポレーションの5年債である。どちらもグリーンボンドとしての募集を行う観測が見られていたが、週後半までに見送りが報じられている。金利水準の低下など起債環境の悪化が要因とされるが、ノンバンクの起債に対する安易なグリーンボンド認定は警戒しておいた方が良いだろう。そもそも日本の社債に関しては、特別な仕組みを盛り込まない限り、会社の一般財産全体に対する請求権が認定される。したがって、再生エネルギーに対するファイナンスであると追補目論見書に記載しても、「金に色はない」のである。つまりグリーンボンドとして調達しても、資金が必ずしも表明された使途のみに使われるとは限らないし、そういった限定は法的に出来ないのである。表明した使途に使われるというのはフィクションであり、発行体のフィクションに投資家が乗っかった形で成立して来たのがグリーンボンドである。結局のところ、グリーンボンドやソーシャルボンドであるという認定基準も、ICMAや環境省、日本総合研究所、格付会社等が乱発している。今一度、基本に立ち返って、その意味を考えるべきではなかろうか。

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