国内起債市場を斬る 起債評価:5/13~5/17

ようやく5月の起債がはじまった。近年の起債の特徴として、限られた時期に案件が集中する傾向にある。また、発行体の業種としては、公的や電力・ガスが目立っている。これは、安定した業種が好まれていることに加えて、金利水準が低下している中で、投資家の利回り志向に対応した超長期年限の起債が可能なこともある。実際に、超長期債単独の募集ではなく、10年以内の年限の債券との組み合わせ募集が多く見られる。

具体例を見ると、住宅金融支援機構は5年債500億円・10年債150億円に加えて、30年債0.658%クーポンを500億円募集した。九州電力は10年債350億円に加えて、20年債0.721%クーポン150億円を募集した。東京ガスの起債が最たるものであった。10年債100億円に加えて、20年債0.486%クーポン100億円・30年債0.693%クーポン200億円・40年債0.875%クーポン100億円と超長期債の合計400億円を募集したのである。

なお、公的セクターでは、超長期債単独での募集も目立つ。日本高速道路保有・債務返済機構は、20年債0.419%クーポン100億円を募集した他に、日を変えて利子一括払いの37年債0.941%クーポン50億円及び38年債0.957%クーポン50億円を募集している。都市再生機構は、40年債0.804%クーポン400億円を募集している。また、その他の民間セクターでも、ANAホールディングスは7年債のソーシャルボンド50億円に加えて、20年債0.84%クーポンを150億円募集している。

このように超長期の起債が多く目立っているが、いずれもクーポンは1%に満たない低水準にある。異次元の金融緩和が継続される中で、投資家のニーズが年限の長期化による利回り確保に向かっていることが確認されている。

一方で、信用スプレッドの獲得による利回り確保については、日銀が社債のスプレッドをも潰している中で、月末あたりを目処とした募集が観測されているアイフルの公募債に注目が集まる。年限は1年半と極めて短い年限であるが、同社の格付けはR&IでBB-格・JCRでBB格と、いわゆる投機的格付けにある。筆者が今年のGWにも投稿した話題ではあるが「果たして日本にハイイールド債が定着できるのか」、後続案件を含めた動向が注目される。ただし、実際には国内2社の格付会社からBBB-格に満たない格付けを取得している企業は、限定的で10社にも満たない。ハイイールド債を発行することを目的とした格付けの取得を広まる機運は起こるのであろうか。「結局は特殊な案件」として扱われて終わらないで、新たなBBB-未満の発行体が芽生え、市場が育つことを望むところである。

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